税務調査官に言いたいことがあれば、がまんせずに言う
「税務調査官を怒らせないように、ちょっと下手(したて)に出ておこう」
そう思っている方も多いようですが、へんに下手に出ると妙な上下関係ができてしまい、いらぬ突っ込みを受けたりします。下手に出る必要はありません。言いたいことがあれば、がまんせずに言っていいし、おかしいと思うことがあれば主張していいのです。
たとえば税務調査官の説明が不親切、態度が悪い、本来は1回で終わるものを「もう1回教えてください」と言うなど、向こう側に落ち度があったりしたら、文句を言ってもかまいません。
税務調査官を怒らせたら重加算税を課されてしまう、などということはありません。もしも税務調査官が気分を害して「この人はムカつくから重加算税」をつけようとしても、事実の裏付けがなければ上司に「重加算税の根拠はなんだ?」と問い詰められて、本人が困ることになります。
ただし、ケンカ腰でいけ、ということではありません。どんな人間関係でもそうですが、特に交渉ごとではむやみに敵対するのは得策ではありません。よほどのことがない限り、全面協力の体(てい)を装って心証をよくしておきましょう。
領収書も請求書もないときは
「帳簿もつけてないし、領収書や請求書もないんです」という人がたまにいます。そういった場合は、通帳などの記録と本人からの聞き取りを元に売り上げと経費を計算していきます。経費はできるだけ高く認めてもらいたいですから、税務調査の前に紙に書き出し、整理しておきましょう。
領収書がないから経費は認められない……なんてことはありません。税務調査官は本人からの聞き取りを元に、過去の実績や同業者の数字を使って経費を推計します。
飲食店のような現金商売の場合は、仕入れ額から原価率を推計し、原価率3割程度で計算すれば売り上げの規模が見えてきます。売り上げも仕入れもすべて現金商売という場合は、家賃や光熱費、使用した割りばしの数などが税務調査官のヒントになります。
記憶があいまいなまま回答することが一番の悪手
記憶があやふや、覚えていないことについて税務調査官が質問してくることもあります。そういうとき、記憶を無理やりたぐり寄せ、あいまいなまま「えーと、あれは、たぶん××だったと思います」などと答えるのは危険です。
覚えていないことは覚えていない、記憶にないと言ってしまえばいいのです。
たとえ、何かやましいことがあって「記憶にない」ととぼけていたとしても、それはそれで結構です。間違いなく断言できること以外は「記憶にない」と言ってください。
はっきり覚えていないことに適当な回答をすると墓穴を掘ります。たとえば、あなたは5年前の確定申告書の中身を覚えていますか?
ふつう覚えていないと思いますが、その年にごまかしをした人は「あのとき、売り上げを少し減らしたよな」というように「悪事」は覚えていたりします。しかし、少しでも記憶があいまいなら「わからない」「思い出せません」と答えてください。
逆に、証拠隠滅のために意図的に破棄したと思われると厄介です。たとえば現金売上があった場合、領収書の控えは本来保存しておくべきであり、それを捨てるのは「売り上げを隠蔽するために破棄した」と見なされる場合があります。
「捨てた」には本人の意図が入っていると判断されてしまうのです。はっきりと「破棄した」という記憶がないなら、「記憶がない」「思い出せない」と回答すべきです。
石川 博正
税理士法人エール新宿 税理士・公認会計士
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