(※写真はイメージです/PIXTA)

身内が亡くなって相続が生じると、決められた期間内にいくつかの手続きを行う必要があります。本記事では、いざというときでも慌てないために、死亡してから相続するまでの手続きの流れを見ていきます。※本連載は、横山光昭氏の著書『長い老後のためのお金の基本』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

「相続放棄の検討」から「名義変更」まで

(4)相続放棄をする(3ヵ月以内)

故人に借金がある場合は、借金も相続の対象になります。そこで、故人の財産を、借金も含めてすべて放棄するのが相続放棄です。

 

相続放棄をしたい場合は、相続開始を知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きを行います。ポイントは、「亡くなってから3ヵ月以内」ではなく、「相続開始を知ってから3ヵ月以内」という点です。

 

たとえば、小さいころに別れて音信不通になった父親に借金があって、債務者が相続人である息子のもとに、突然あらわれる、などということもあります。「亡くなって、もう3ヵ月以上たっているから、相続放棄もできませんよ」と言って脅す例もあったそうですが、あくまで「亡くなったのを知った日から」が基準になります。

 

(5)相続税の申告をする(10ヵ月以内)

相続税の申告は、亡くなった日の翌日から10ヵ月以内です。これを過ぎると、故人と一緒に住んでいた不動産の評価額が80%軽減されるという特例措置が受けられなくなるだけでなく、追徴課税を課せられることになります。

 

まずは遺言状の有無を確認して、もし見つかったら開封せずに、家庭裁判所に持ち込むのが、のちのちのトラブルを防ぎます。家庭裁判所の手続きには1ヵ月以上かかる場合もあるので、余裕を持って対処しましょう。

 

遺言状がない場合は、相続人全員で話し合い、「遺産分割協議書」をつくります。全員の合意が必要ですので、相続人があちこちに散らばっている場合は、時間がかかります。

 

また申告に必要な書類をそろえるのに、予想以上の時間がかかると思ってください。隠し子がいる場合もありますので、相続人すべてを明らかにするために、故人が生まれてから死亡に到るまでの連続した戸籍謄本が必要になります。

 

とくに故人があちこちに移転していた場合は、すべての場所の戸籍謄本が必要なので、かなりたいへんな作業になります。さらに相続人全員の印鑑証明書や遺産分割協議書の写し、故人のマイナンバーカード、健康保険証など、そろえる書類はたくさんあります。

 

こうした書類を整えた上に、不動産や株、投資信託などがあれば、評価額の計算も必要です。10ヵ月という限られた時間しかありませんので、税理士や司法書士など専門家にまかせたほうが安心な場合もあります。プロでも申告書類を整えるのに4、5ヵ月かかることがあるので、直前になってあわてないよう、早めに動き出しましょう。

 

なお、相続税の申告をすませたら、すぐに相続税を納めてください。

 

(6)相続が決まったら行う

相続が確定したら、名義の書き換えを忘れないうちにすませておきましょう。預貯金の名義変更は金融機関で、株は証券会社、不動産の名義書き換えは法務局で行います。

 

よくあるのは、夫名義の家を妻が相続したものの、名義変更をせずにそのままにしておくケースです。不動産の名義変更をしなくても、別に罰則はありませんが、妻が亡くなり、さらに相続人である子どもも亡くなって孫の代になると、相続人の数はどんどん増え、ますます名義変更が複雑になってきます。

 

中には何代も前から名義変更が行われず、そのままになっている土地や家もあります。こうした不動産は、ぼうだいな数の相続人が存在しているので、すべての相続人に連絡をとって、名義書き換えの協議を行うことは不可能です。

 

日本中に増えている空き家問題なども、こうした事情が背景にあるだろうと思われます。孫や子孫の代に負担を残さないためにも、名義の書き換えはすみやかに行ったほうがいいでしょう。

 

横山 光昭

株式会社マイエフピー代表取締役

家計再生コンサルタント

 

 

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