投資で老後資金を作るには「長期・分散・積立」が重要
老後資金をつくるため、そして減らさないために行う投資は、とにかく
・長期
・分散
・積み立て
が合い言葉です。今まで投資をしたことがない人が、老後問題に直面して、初めて投資をするときは、「長期・分散・投資」を肝に銘じておかないと、予期せぬ事態にまきこまれてしまうことがあります。
筆者のところに家計相談に来たあるお客さんの例です。老後資金を増やそうと、500万円もの大金をある国内投資信託1本に、いきなり投じてしまった方がいたのです。
投資する金額が大きければ大きいほど、もうけも大きい。そう考えたのでしょう。たしかに原理はそうだとしても、裏返せば、損も大きいことになります。その方は、人気ランキング1位になっていた投資信託の商品を「1番人気だから大丈夫だろう」と信じて大金を投じたものの、その後、評価額はどんどん下がって、あわててしまいました。
筆者のところにこられた時点で、すでに60万円の損失が出ていました。少し待てる余裕があるなら、様子を見る選択肢もあったのですが、60万円の損でひどく狼狽している様子であったことを記憶しています。最終的には、ご自身の判断で売却を選ばれていました。
この人の失敗は、「一度にひとつの商品に大金をつぎこんでしまったこと」と「どれだけのリスクなら許せるのか、リスク許容度を考えていなかった」ところにあります。
もしリスクをさけたいのなら、いろいろな要素を「分散」させるのが鉄則です。分散させるのは次の4つです。
(1)通貨の分散
(2)時間の分散
(3)商品の分散
(4)地域の分散
まず、(1)の通貨の分散についてですが、円だけで保有するのではなく、外貨でも保有するなど、値動きが異なる傾向のある通貨を持ちましょう。信用リスク、為替変動のリスクを分散することが期待できます。
(2)の時間の分散について。株や債券のマーケットはいいときもありますし、悪いときもあります。短期で取引きしていると、そうしたマーケットの影響をモロに受けてしまいます。しかし長い期間、定期的に積み立てていれば、年によって変動があってもそれが平均化されるので、平均購入単価を抑えることができます。
(3)の商品の分散とは、値動きの異なる複数の商品を持つということです。1つの商品に集中させると、その商品が下がったときのリスクが大きくなります。複数の商品に分散させたほうがリスクは小さくなります。
(4)の地域の分散について。日本の株式市場が落ち込んでいても、アメリカやヨーロッパは景気がいいかもしれません。特定の地域だけでなく、新興国から先進国まで世界のさまざまな国の株や債券にも投資することで、カントリーリスクを緩和できます。
さらにもうひとつ考慮しておかなければいけないのは、自分がどれくらいのリスクを許せるのか、という点です。これは貯蓄をどれくらい持っているかということに関係なく、個人の性格によって違います。
10万円投資して、それが9万8000円になっただけで大騒ぎする人もいれば、2万、3万減ったくらいではなんとも思わない人もいます。その人の性格や気質によって、リスクの許容度が異なるわけです。自分の場合はどれくらいなのか、あらかじめ自問しておくといいでしょう。
小さな損も許せないという人なら、慎重にも慎重を期して、利益は少なくてもリスクが少ないもので運用すべきだし、少々のリスクでは動じないという人なら、選ぶ投資商品の幅も広がってきます。
長く続けるためにも、ご自身のリスク許容度や性格などによって、やり方は違ってくるということです。
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