(※写真はイメージです/PIXTA)

50代になると年収800万円を超え、金銭的に余裕が出てくる会社員も多くなります。しかし、子どもが大学に入学したころから無駄な出費を控えて、老後に備えて貯金をすることが大切です。それはなぜでしょうか? 詳しく見ていきます。※本連載は、横山光昭氏の著書『長い老後のためのお金の基本』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

子どもが大学に入ったら「生活の縮小」を心掛ける

40代後半から50代になると、若いころに比べて年収もそこそこあがってきます。生活費や子どもの教育にもお金がかけられるようになるので、「これくらいお金をかけてもいいんじゃない?」と、つい風呂敷を広げがちです。

 

たとえば子どもを私立の学校に通わせたり、都内の環境のいい場所に引っ越してみたり、無農薬の食材や水に凝ってみたり。風呂敷を広げてもやれてしまうのがこの年代です。

 

とくに年収800万円を超え、1000万円近くになると、いろいろなことをやり始めてしまいます。でもそうやって「これくらい、お金をかけてもいいんじゃない?」とやっていくと、貯金があまりできません。なぜなら、ふくらんだ食費や教育費や住居費は、その後、減ることはなく、ほぼ固定的に出ていくからです。

 

そのまま風呂敷を広げていると、年金生活に入っても急にはたためなくなって、老後生活で苦労します。

 

ですから年収が増えても、「これくらい、お金をかけてもいいんじゃない?」という価値観にはまどわされないことが大切です。

 

年収が増えたときこそ、老後のための貯金のチャンスととらえましょう。子どもが大学に入ったら、独立するまであと一歩。もう今後、子どもにお金はかかりませんから、このころから徐々にダウンサイジングを心がけるといいでしょう。

 

広げた風呂敷は急にはたためないので、意識して少しずつ風呂敷を縮めていくのです。年齢的には55歳くらいからダウンサイジングを心がけるのが理想です。60歳や65歳で、いきなりギュッと縮めると、「なんのために自分は今まで一生懸命働いてきたのだろう」と虚しくなってしまうかもしれません。だからこそ、年収がしっかりある40〜50代の現役時代から始めるほうがいいのです。

 

「生活を縮小するのは悲しい」と感じる人もいるかもしれませんが、筆者の場合は考え方が逆です。生活をダウンサイジングするのは、将来を楽しむためです。

 

70歳くらいで死ぬという、太く短い人生が送れればいいですが、今は100歳まで生きる人も少なくありません。何十年も長生きしても、お金がなくて楽しみがない生活を長い間送るのはとても嫌です。

 

それなら今は多少我慢しても、将来が楽しいほうがいい。かといって、今を犠牲にしているわけではなく、今の生活もメリハリをつけて「楽しみのための浪費」もやります。でもむだな出費はさけて、将来に向けてしっかり貯金しておきたい。そのためのダウンサイジングです。

 

老後になると、生活費は現役時代の8割くらいが目安です。さらに75歳をすぎると7割くらいになります。ただし80歳を過ぎると、介護費用がかかり始め、90歳を過ぎると、介護費用だけで年間154万円かかるというデータもあります。

 

介護保険があるので、自分で負担する介護費用は実際にはこの数字の1割〜3割になりますが、それでも長生きすると、今まで以上にかかってくるお金があります。そうしたことを考えて、50代から生活をスリムにするよう意識し、浮いた分を貯蓄に回す習慣を身につけてください。

 

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長い老後のためのお金の基本

長い老後のためのお金の基本

横山 光昭

筑摩書房

「年金は70歳まで出なくなる? 」「定年後、1人2000万円は必要」「老後破産」「下流老人」等々、老後の生活の不安をあおる情報が飛び交っている。どれがフェイクで、どれが現実なのか? 定年後のビジネスマンの標準的な家計…

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