ケース5:メルカリの「転売」で儲けた専業主婦Yさん
専業主婦のYさんの趣味は、テーマパークのオリジナルグッズをコレクションすることでした。あるとき、多く買いすぎてしまったグッズ(生活雑貨)を「メルカリ」などのフリマ(フリーマーケット)サイトに出品したところ、思ったより高く売れたのがきっかけで、転売にハマりました。
あまりに売れ行きがよく、一人では出品する品物の調達が難しくなったYさんは、会社員の夫に助けを求めました。妻も喜ぶし、小遣い稼ぎになるなら、と夫も喜んで協力。
夫が休みの日にテーマパークでまとめて買い出しをし、平日にYさんが出品して売るというスタイルで、毎月コンスタントに数十万円の利益が出ていました。
Yさん「儲かっているけど、そんなに額は多くないから、申告しなくてもいいよね?」
Yさんの夫「うん。そもそも、生活用品の転売は税金がかからないはずだよ」
そんなYさんにも、税務署から電話がかかってきました。生活用品の転売には税金がかからない、というルールはたしかにありますが、Yさんの夫のように、それを誤って「生活用品なら転売で商売しても税金はかからない」と解釈する人がときどきいます。
しかし、最初から転売が目的だとされた場合は、商売をしているのと同じ、と見なされ、税金がかかってしまいます。利益が発生したら税金がかかるという認識を持つことが必要です。
また、Yさんは専業主婦だったため、夫の配偶者控除の対象でした。しかし、今回の税務調査で扶養から抜けてしまうことが判明して、夫の税金もアップしてしまいました。さらに販売する商品の仕入れの際に、夫のクレジットカードを使っていたため、実際に副業をしているのは夫じゃないか、という疑いも持たれてしまいました。夫の勤務先は副業に厳しいためピンチです。
「お前が転売なんか始めるから」
「あなたが税金はかからないって言ったんじゃない」
仲のよかったYさん夫婦は税務調査をきっかけに、すっかり不仲になってしまいました。
ケース6:副業の「不動産経営」で儲けた会社員Dさん
会社に勤めながら、不動産物件を所有するDさん。定期的に賃料収入があるのですが「たいした額じゃないし、バレないだろう」と考えて確定申告をしていませんでした。
そのまま数年間、特にだれにも指摘されなかったので「しめしめ」と思っていたDさんでしたが、管理を依頼している不動産会社に税務調査が入り、無申告がバレてしまいました。
結局、Dさんにも税務調査が入り、Dさんは過去5年分の税金を払うだけでなく、脱税であるとして重加算税も課せられてしまいました。
不動産賃貸経営をしているサラリーマンの場合、経費を増やすなどして不動産所得を赤字にし、それを本業の給与所得で相殺することで、全体の所得額を減らして所得税減額をはかる「損益通算」という裏ワザが知られています。
必要以上に多い経費などは税務調査の追及ポイントになるので要注意です。
ケース7:「仮想通貨」で大儲けした会社員のKさん
会社員をしながら仮想通貨(2020年5月〜は暗号資産と呼称)の投資で大きく儲けたKさん。昨年は取引を見直し、数種類の仮想通貨のうち一部を現金化、一部はそのまま、一部は別の仮想通貨と交換しました。
Kさん「現金化して利益が出たから、ちゃんと確定申告したよ!当然でしょ」
仮想通貨で利益が出たら申告しなければならない、ということはわかっていたKさんは、確定申告をして、すっかり税金関係は終了したと思い込んでいました。
しかしある日、Kさんの元にも税務署から電話が。Kさんは、保有するエイダコインをビットコインに交換したのですが、仮想通貨同士の交換は、通常の動産の売却と同様に扱われ、時価により売却したものとして扱われることになっていたのです。
現金化した場合だけでなく、仮想通貨の交換によって利益が出た場合も課税所得となり申告をしなければいけない、ということを、うっかり見落としていたのです。
税務調査の結果、Kさんは、交換した際の利益を含めた金額で修正申告することになりました。
石川 博正
税理士法人エール 税理士・公認会計士
※本記事のケースはすべて実際にあった税務調査を下敷きにしていますが、個人が特定されないように、登場する人物は仮名にしております。
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