●GAFAMは米国株の上昇をけん引しており、5社の時価総額はS&P500種株価指数の2割強に。
●GAFAM株調整のリスクには要注意だが、景気回復度合いの強弱による調整は一時的の可能性。
●急速な金融引き締めはリスクだが非現実的、より注意すべきは米政権の競争促進方針と法整備。
GAFAMは米国株の上昇をけん引しており、5社の時価総額はS&P500種株価指数の2割強に
米国では今週、ハイテク企業の代表格であるGAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)の4-6月期決算発表が終了しました。ポイントは図表1の通りで、総じて良好な結果となりました。ただ、株価については、事前の期待が大きかったことなどもあり、先週末比では低迷が目立ちます。
GAFAMは、ここ数年、米国株のけん引役となっています。例えば、過去5年間のデータをみると、S&P500種株価指数は103.3%上昇しましたが、GAFAMの株価上昇率はいずれもこれを上回っており、アップルやマイクロソフトの上昇率は400%を超えています。また、S&P500種株価指数の時価総額に占めるGAFAMの時価総額の割合は、5年前の11.5%から現在は23.6%と、ほぼ倍増しています(図表2)。
GAFAM株調整のリスクには要注意だが、景気回復度合いの強弱による調整は一時的の可能性
このように、米国株が数年にわたって堅調に推移してきたのは、極端なGAFAM人気によるところも大きいといえます。そのため、この先、仮にGAFAMの株価が調整局面を迎えた場合、米国株が全体として調整色を強めてしまう恐れもあります。そこで以下、GAFAM株の調整入りにつながるリスクシナリオをいくつか想定し、株価への影響について考えてみます。
1つ目は「米景気回復度合いが予想外となるケース」です。予想外に強まった場合、GAFAMなどのグロース株から、景気敏感なバリュー株へのシフトが見込まれます。ただ景気の強さはGAFAMの業績にも追い風であるため、調整は一時的と思われます。また、コロナの感染再拡大などで予想外に弱まった場合は、株価全体にマイナスですが、金融緩和が継続されることで、コロナ禍でのグロース株の優位性が改めて意識されやすくなるとみています。
急速な金融引き締めはリスクだが非現実的、より注意すべきは米政権の競争促進方針と法整備
2つ目は「金融環境が極端に引き締まるケース」です。これは、景気回復の度合いが予想外に強くなり、かつ、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐ場合で、引き締めによる流動性相場の終了は、GAFAM株の大幅な調整要因となり得ます。なお、流動性を一気に回収するには、量的緩和の縮小(テーパリング)や利上げでは力不足で、保有する国債などの売却が効果的です。ただ、FRBはそこまで踏み込むことはないと思われます。
3つ目は「米政府がハイテク企業への監視を強めるケース」です。バイデン米大統領は7月9日、市場で支配的な地位を占める米ハイテク大手が競争を阻害しているとし、企業間の競争促進を目的とする大統領令に署名しました。現段階で、GAFAM株の反応は限定的ですが、今後、具体的な法整備が進むとみられるため、業績への影響を見極める必要があると考えます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ハイテク大手の株価調整のリスクシナリオとは?』を参照)。
(2021年7月30日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト