私たち自身の思考・行動の様式をどう変えるのか
このような考え方、つまり「これがダメだからアレに変えよう」という「代替=オルタナティブ」の考え方は、対象となるシステムに悪化の真因を求め、それを別のシステムに切り替えることで解決しようという考え方で、大変安易で手軽ではありますが、結局は問題の根本を解決できません。
筆者自身は、システムを無批判に受け入れる態度にはもちろん批判的ですが、だからといって問題の原因をすべてシステムに帰せしめ、これを他のものに代替すれば問題は解決するという考え方にも否定的です。
この点はすでに前著『ニュータイプの時代』においても指摘したことですが、ここであらためて確認しておきたいと思います。本連載の冒頭よりずっと指摘してきた通り、私たちが依拠している現在のシステムにはもちろん大きな問題があります。そしてこの問題は、このシステム自体の是非を問わず、これを一種のゲームとして受け入れて最適化することで自分の利益を増やそうとするオールドタイプによって拡大再生産されています。
しかし、ではこのシステムを全否定し、何か新しいシステムへのリプレースを断行しようとするのが、これからの革新を引っ張っていくニュータイプなのでしょうか? いいえ、筆者は決してそのようには考えません。両者はまったく対極の関係にあるように思えるかもしれませんが、システムが「主」で人間が「従」という枠組みが世界観の基底となっている点でまったく同じなのです。
現在の私たちが直面している状況を「システムの問題」として処理することはできません。多くの人はいまだに「どんなシステムにリプレースすれば、問題が解決するのか」という論点を掲げて議論していますが、どんなシステムを用いたとしても、その中で生きていく人間が変わらなければ、そのシステムが豊かさをもたらすことはありません。重要なのは「システムをどのように変えるのか」という問いではなく、「私たち自身の思考・行動の様式をどのように変えるのか」という問いだ、ということです。
山口周
ライプニッツ 代表