※画像はイメージです/PIXTA

新型コロナ感染拡大の影響により、入院生活ではなく、在宅療養を選択する患者・家族が増えています。認知症患者の在宅サポートに疲れてしまう家族はどうすればよいのでしょうか。在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長、宮本謙一氏が解説します。

「認知症と在宅医療」医師が教えるサポートの知恵

厚生労働省によると、2020年時点で、認知症の患者数は600万人を超えていると推測されています。今後も高齢者人口の増加に伴い、認知症の患者数も増え続ける見込みです。もちろん、認知症だからといってすぐに生活において大きな支障をきたすわけではなく、毎日、元気で過ごしている方もたくさんいます。

 

しかし、認知症が進行すると、記憶力や判断力の低下から、周囲のサポートがなければ日常生活を継続していくことが困難となります。

 

認知症の患者さんの在宅療養にあたっては、家族と、医師や訪問看護師などの医療チーム、そしてケアマネジャーやヘルパーなどの介護従事者が、認知症についての正しい知識をもって温かい目で患者さんをサポートしていくことが重要です。

 

認知症の進行の仕方や症状はさまざまですが、もの忘れによる失敗や、今まで苦もなくやっていた家事や仕事がうまくいかなくなるようなことが増え、次第に不安になり、自信をなくして「抑うつ的」になる人、自分が忘れているのではなく周囲の人が間違っていると「怒りっぽく」なる人、周囲の人が自分を陥れようとしているのだと「妄想的」になる人などがいます。

 

有名な症状としては「財布がなくなった」「盗まれた」などと大騒ぎする「物盗られ妄想」があります。患者さんの訴えに対して「そんなわけないじゃない」と真っ向から理論的に否定しても納得してもらえることは少なく、むしろ不安や怒りっぽさを悪化させ、患者さんの混乱を招き、ますます症状の悪化につながるかもしれません。何より、患者さんに接する家族や介護者が疲れてしまいます。

 

患者さんに接するすべての人が認知症に関する正しい知識をもって、また常に心に余裕をもちながら、患者さんの不安な気持ちに共感して相手の言葉を繰り返したり、どうしてもこだわりが強いときは散歩に連れ出したり、食事などで気分転換を図るなどして対応することが必要です。

 

たとえば「財布を盗まれた」といつも大騒ぎする患者さんの場合は、同じ財布をもう一つ用意しておいて「すぐに見つかって良かったね」と安心させる方法もあります。家族など特定の誰かに過大な負担がかからないよう、患者さんの在宅療養をサポートするすべての関係者が知恵を出し合っていくことが重要です。

 

認知症にはさまざまなタイプがありますが、現時点では、あまり有効な治療薬はありません。認知症の進行を遅らせる薬や、過度の不安や怒りっぽさを抑えるような薬を併用することもありますが、あくまで補助的なものです。とはいえ、少量の薬を追加することで、患者さんが穏やかに生活できるようになり、介護の負担が大幅に軽減されることもあります。

 

私たち在宅医は、患者さんの生活の様子全般を観察するとともに、家族などの介護者の負担も考慮しながら、できるだけ穏やかに在宅療養を継続できるよう、必要最低限の薬の投与を含め、常にきめ細かで丁寧な診療を心掛けています。

 

 

宮本 謙一 

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長

 

 

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※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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