※画像はイメージです/PIXTA

新型コロナ感染拡大の影響により、入院生活ではなく、在宅療養を選択する患者・家族が増えています。認知症患者の在宅サポートに疲れてしまう家族はどうすればよいのでしょうか。在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長、宮本謙一氏が解説します。

入院生活から在宅療養へ…切り替えの大きなメリット

2020年の春から新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。それに伴い、世界各地で厳しい行動制限が取られています。特に病院については、もともと全身状態の悪い患者さんが多数入院しているため、院内で感染が流行すると重症者や死亡者がたくさん出てしまうという特殊な事情から、外部の人が病院の中に入ることについて、厳しく制限されています。

 

このような厳しい「面会制限」のため、入院中の患者さんが家族に会えないまま最期を迎えるケースが増えています。そのため、残された限りある時間を家族と一緒に楽しく過ごしたいという理由で在宅療養を選択する方が増加しています。

 

入院生活と違い、在宅で治療を続けること、すなわち在宅療養の最大のメリットは、いつでも家族や親族、友人たちと会えること、そしてさまざまな制約がある入院生活と違い、自由に好きなように過ごせることです。

 

たとえば食事について、病院であれば基本的には、治療を目的とした病院食を食べなければいけません。食品の持ち込みが多少は可能な場合もありますが、いつでも好きなものを自由に食べるということは不可能です。病院はあくまで治療をするところであり、病院のルールに従い生活面全般について厳しく制限されるのは当然のことです。

 

一方、在宅療養にあたっては、原則としてそのような制限はありません。自宅は日常生活の場であり、病気の治療のために生活しているわけではなく、治療は生活のなかのごく一部です。もちろん、私たち医師や看護師などの医療従事者は、生活リズムのことや食事のこと、排泄や入浴、清潔保持についてなど、生活面全般についてのアドバイスは行いますが、それを強制することはありません。自由に生活ができることこそが、在宅療養の最大のメリットだからです。

 

在宅療養中の患者さんで、かなり病状の重い方から、外出や旅行に行きたいとの相談を受けることがあります。もちろん、病状が悪化して患者さん本人が苦しむ可能性が高い場合は、お勧めはしません。しかし、そこまでの状況ではなく、状態が悪化したときの十分な対処法やサポート体制を整えて外出や外泊をする場合は、できるだけ私たち医療従事者もお手伝いします。

 

特に、がんの末期状態の方など残された時間に限りがある方は、少しでも有意義に過ごしていただきたい、少しでも人生を楽しんでいただきたいと思います。たとえば、亡くなる直前の方でも、家族やヘルパーさんの協力を得て自宅近くに花見に行き、目一杯楽しんで笑顔になっていただく――そういったことは本当にすばらしいと思います。

 

次ページ在宅療養は「家族の心」をも救う

※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧