死亡事例も…高齢者の入浴に潜む「4つのリスク」
続いて、入浴事故のリスクです。まずは風呂場での入浴介助のときに起こり得る事故やトラブルとしてはどのようなものがあるのかを確認しましょう。
第一は転倒です。特に入浴時の転倒事故はそのリスクがほかの場合と比べても格段に高くなります。
乾ききっている風呂場の床の上を歩いている分には、転倒する恐れはほとんどないでしょう。しかし、シャワーなどを使い一度床が濡れると、状況は激変します。ほんの少し体重を移動しただけでも滑って転倒する恐れのある状況に環境が変化します。健常者でも極めて危険な状況が出現します。
また施設の風呂場は広いので、滑ったときにとっさに手でつかみ体を支える手摺りなどが体のすぐそばにない場合がほとんどです。しかも、床が堅く、裸の状態であるため、転倒による体への衝撃が大きく重大事故につながるリスクが格段に高まるのです。
第二は溺水です。すなわち浴槽の中で溺れる事故も起こり得ます。「なぜお風呂で?」と怪訝に思う人もいるかもしれませんが、高齢になると体調や健康状況次第で簡単に溺れてしまいます。
例を挙げると、高血圧の薬を服用すると、ふらつきなどに襲われることがありますが、入浴中にそうした薬の副作用が出ると、水中に顔を沈めたまま戻らない状態になることもあるのです。
溺水事故は即、命の危険に関わることから、介護する側からすれば一瞬たりとも気を抜くことはできません。実際、入浴介助をしていた介護スタッフが別の用事のためにその場を離れ、5分後に戻ってきたら浴槽の中で入居者が亡くなっていたという報道もされています。
第三はヒートショックです。これは、急激な温度変化で体にダメージを受けることです。具体的には、脱衣室と浴室の温度差などによって血圧が上下に急変動し、心筋梗塞や脳梗塞などが起こります。高齢になると、温度の変化に対応しづらくなることなどが原因とされており、特に冬場に多く発生します。
第四として、やけど事故にも注意が必要です。高齢者は皮膚感覚が鈍くなっていることなどもあって、温度が高いままシャワーを浴びても熱いと感じずにいる場合があります。そこに職員の不注意などが加わり、やけどを負うケースがみられます。
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