●1回目と2回目の緊急事態宣言の発令中は、いずれも新規感染者数が減少し日経平均は上昇。
●3回目も新規感染者数は減少したが株価は小幅安、これはタカ派的なFOMCが影響した可能性。
●回帰分析では宣言中の感染者数減で株高の関係を確認、ただ4回目は特殊要因があり要注意。
1回目と2回目の緊急事態宣言の発令中は、いずれも新規感染者数が減少し日経平均は上昇
5月14日付レポート『緊急事態宣言と日本株の関係』では、1回目と2回目の緊急事態宣言について、発令後に新規感染者数はどのように変化したのか、また、日経平均株価はどのように推移したのかを検証しました。その結果、いずれの宣言発令期間中においても、新規感染者数は減少し、日経平均株価は上昇したことが確認されました。なお、日経平均株価の上昇率は、1回目が11.7%、2回目が8.4%でした。
3回目の緊急事態宣言は、5月14日時点でまだ発令中でしたが、5月12日までのデータで検証したところ、新規感染者数に減少傾向はみられず、日経平均株価も3.0%下落していました。3回目は6月20日までの期間(沖縄県を除く)であったため、今回のレポートでは、改めて3回目のケースを検証するとともに、各回の新規感染者数と日経平均株価の関係を、もう少し詳しくみていきます。
3回目も新規感染者数は減少したが株価は小幅安、これはタカ派的なFOMCが影響した可能性
はじめに、3回目の緊急事態宣言についてみていくと、発令期間中、新規感染者数は減少したものの、日経平均株価は0.2%下落という結果になりました(図表1)。前述の通り、過去2回のケースでは、緊急事態宣言の発令によって、新規感染者数が減少し、日経平均株価は上昇する傾向が確認されていました。しかしながら、3回目の動きは、これとは異なるものとなりました。
なお、3回目の緊急事態宣言の開始(4月25日)と終了(6月20日、沖縄県を除く)は、いずれも週末だったため、日経平均株価は4月23日から6月18日で騰落率を計算しています。6月は、15日と16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、想定よりタカ派的な内容を受け、日経平均株価は一時下落しました。新規感染者数が減少しても、株価が下げたのは、このことが強く影響したと推測されます。
回帰分析では宣言中の感染者数減で株高の関係を確認、ただ4回目は特殊要因があり要注意
次に、簡単な回帰分析で、新規感染者数と日経平均株価の関係を検証します。サンプル数が少ないため、参考程度となりますが、緊急事態宣言が発令された3回の期間において、新規感染者数が減少すると、日経平均株価は上昇するという関係がみられ、統計的に有意であることが確認されました(図表2)。また、緊急事態宣言が発令されていない期間についても検証したところ、そのような関係は安定的にはみられませんでした。
現在、4回目の緊急事態宣言が発令されていますが、この結果を踏まえると、新規感染者数が減少に向かえば、日経平均株価が上昇することも期待できます。しかしながら、国内では変異ウイルスの感染拡大が続いており、さらに今回は、過去3回と異なり、オリンピック・パラリンピックの開催という特殊要因があります。そのため、新規感染者数の動向については、かなり慎重にみていく必要があると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『緊急事態宣言と日本株の関係を再検証する』を参照)。
(2021年7月15日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト