●緊急事態宣言中の新規感染者数と日経平均の動きについて過去2回と今回3回目を比較する。
●1回目と2回目の緊急事態宣言の発令中は、いずれも新規感染者数が減少し日経平均は上昇。
●宣言中の株価は感染者数がポイント、ただ他の要因もあり、今回であれば米インフレ動向も注意。
緊急事態宣言中の新規感染者数と日経平均の動きについて過去2回と今回3回目を比較する
3回目となる新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に対し、4月25日に発令されました。その後、政府は5月7日に対策本部を開き、5月11日の期限を31日まで延長することを決定しました。また、5月12日からは愛知と福岡が加わり、対象地域が6都府県に広がるなど、感染拡大抑制のための政府の対応が続いています。
そこで、今回のレポートでは、改めて緊急事態宣言が日本株に与える影響について考えてみます。具体的には、過去2回の緊急事態宣言について、発令後、新規感染者数はどのように変化したのか、日経平均株価はどのように推移したのかを、改めて検証します。また、今回3回目の緊急事態宣言についても、4月25日以降の新規感染者数と株価の動きを確認し、過去2回と比較します。
1回目と2回目の緊急事態宣言の発令中は、いずれも新規感染者数が減少し日経平均は上昇
はじめに、1回目の緊急事態宣言を振り返ります。1回目の緊急事態宣言は、2020年4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に発令され、4月16日には全国に対象が拡大されました。その後、国内の新規感染者数は、減少に向かい、緊急事態宣言は5月25日に解除されました。なお、日経平均株価は宣言発令期間中、11.7%上昇しました(図表1)。
次に、2回目の緊急事態宣言を振り返ります。2回目の緊急事態宣言は、2021年1月8日に東京、神奈川、埼玉、千葉の4都府県に発令され、1月14日には11都府県に対象が拡大されました。国内の新規感染者数は、1回目と同様、発令後は減少に向かい、緊急事態宣言は3月21日に解除されました。また、日経平均株価も1回目と同様、宣言発令期間中、8.4%の上昇となりました(図表2)。
宣言中の株価は感染者数がポイント、ただ他の要因もあり、今回であれば米インフレ動向も注意
過去2回の緊急事態宣言中の株高は、宣言発令後の新規感染者数の減少を受け、株式市場が宣言解除後の経済活動再開を織り込んだことによるものと推測されます。そして、今回3回目の緊急事態宣言は、前述の通り4月25日に発令され、対象地域は現在6都府県となっています。今回は、まだ新規感染者数に減少傾向はみられず、日経平均株価は5月12日まで3.0%下落しています(図表2)。
以上より、緊急事態宣言中の株価は、新規感染者数の動向に影響を受けやすいと考えられます。この点を踏まえると、今回は、国内で変異株の感染が広がっており、過去2回とは異なる状況にあるといえます。なお、緊急事態宣言の1回目は日米の大型経済対策と金融緩和強化、2回目はバイデン米大統領の政策期待も株価に影響したと思われるため、今回は国内の新規感染者数だけでなく、米インフレ懸念の行方にも注意が必要と考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『緊急事態宣言と日本株の関係』を参照)。
(2021年5月14日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト