ケース3:「法人成り」をした社員7名の美容クリニック
◆規模:役員と従業員7名
◆採用制度:企業型DC
◆目的と効果:
・経営者の節税と福利厚生の拡充
・役員には、5万5,000円を拠出
・一般社員には、一律1万円を拠出
・全額損金で経営者の退職金準備を実施
Cさんは、美容クリニックの院長です。これまで勤務してきたアンチエイジングを中心としたクリニックから独立したばかりです。おしゃれで落ち着いた雰囲気の院内インテリアは働く女性を中心に人気を博しています。
Cさんのクリニックは、最新のマシーンを使った診療が専門なので、それほど人員も必要なく、特に事業規模を大きくする予定もないため、法人の利益はできるだけ個人資産に移転したいと考えています。
とはいえ、会社の利益を役員報酬として個人に移すと、社会保険料の負担も増えますし、個人の所得税も増えます。法人成によって、厚生年金に加入することになったので、法人と個人の両方での社会保険料負担がとても重いとも感じていました。
そこでCさんが取り入れたのが、企業型確定拠出年金(DC)です。企業型は個人型と異なり、会社が掛金を個人の確定拠出年金口座に拠出します。拠出した掛金は、会社としては全額損金計上となりますから、法人税の圧縮となります。社会保険料の算定対象にもなりませんので、社会保険料を増やさず、経費を増やして資産の個人移転ができます。
一方で、Cさん個人の確定拠出年金の口座に拠出された掛金は、Cさんの所得税の対象とはなりません。また、法人同様社会保険の算定対象となりませんから、社会保険料の負担増にもなりません。経営者は会社としての支払いと個人としての支払いが発生しますが、確定拠出年金は両方の面でメリットを受けられます。
なによりCさんが喜んだのは、掛金です。Cさんは個人事業主時代から個人型確定拠出年金(iDeCo)を始めていました。それが法人成により年金被保険者区分が1号から2号に変わり、月の掛金上限が6万8,000円から2万3,000円に引き下げられたことに不満を感じていました。
しかし、企業型にすることにより、Cさんの掛金上限が5万5,000円まで拡大することを知り、メリットだと考えました。
また、iDeCoの掛金拠出は現行60歳までとなっていますが、企業型は導入時の設定で65歳まで拠出ができるので、少しでも多く個人へ資金移転をしたいと思うCさんの目的に合致します(掛金拠出期間は2022年より個人型は65歳、企業型は70歳まで拡大されます)。
企業型を導入するにあたり、少し躊躇したのが、その導入費用です。個人型の新規加入にかかる費用は数千円ですが、企業型の場合は、制度導入の際に金融機関に対して数十万円の初期費用や、毎月1万円程度のランニングコストも継続的にかかります。しかし、それらを加味しても十分ペイできると考え、導入を決められました。
従業員については、福利厚生の拡充として、一律1万円の掛金としました。ドクター含めスタッフ全員が女性なので、長生きに対する関心も高いみなさんです。Cさんの意向で座談会形式で行なった勉強会はとても盛り上がりました。
山中 伸枝
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役
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