(※写真はイメージです/PIXTA)

「人生100年時代」といわれています。定年後の避けては通れない課題は「お金」で、3000万円不足するなどといわれていますが、実際のところはピンとこない人も多いことでしょう。60代は退職金や確定拠出年金の受け取り金、養老保険の満期金など、一時的にまとまったお金ができる時期です。あなたの将来を左右する大切な老後資金を失ってしまうケースもあります。本連載は長尾義弘著『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

退職金制度のある企業は、全体の75.5%

■退職金、本当にもらえる?

 

退職金を心待ちにしている人は多いと思います。あれもしよう、これもしようと計画を立てているかもしれません。そんな楽しい気分に水を差して申しわけないのですが、ちょっと待ってください。

 

退職金は必ず出るものだと思っていませんか。

 

じつは、会社が退職金を支払う法的な義務はありません。退職金とは、賃金の一部を積み立てていき後払いで受け取る、企業に貢献した報償金、老後の生活資金といった意味合いをもっています。会社の規定になければ、退職金は出ないかもしれません。

 

実際、退職金制度のある企業は、全体の75.5%です(厚生労働省:就労条件総合調査結果の概要、平成25年)。

 

では、退職金制度がある会社では、どのくらい出るのでしょう。

 

日本経済団体連合会の調査によれば、平均は約2400万円(大卒総合職)、東京都産業労働情報センターの「中小企業の賃金・退職金情報」では、約1200万円(大卒)となっています。大企業と中小企業では、2倍の差があります。

 

想像していたよりも少ない金額で、予定していた老後プランがくずれることも考えられます。

 

退職金が出るのか出ないのか、出るとしたらどの程度なのか。可能な範囲で確認しておければ、より現実的な計画が立てやすくなるでしょう。

 

 

■毎月分配型の投資信託のからくり

 

投資信託に「毎月分配金型」という商品があります。これは、毎月決まった金額の分配金を受け取れるしくみになっています。年金で足りない生活費の穴埋めになるとあって、シニアに人気です。

 

こうした分配金は、運用がうまくいっている場合には配当として支払われます。利益が出ているのですから、税金もしっかり取られます。逆に運用がうまくいかないときは、元本を取りくずして支払います。ただ、利益が出ていないため税金はかかりませんが、自分のお金がもどってくるだけです。

 

ただ、単純に自分のお金を返してもらうように見えて、そこは投資信託。たとえ利益が出なくても、元本から信託報酬が引かれます。

 

こうした理由から、金融庁から長期投資には不向きだという警告が出されました。これにより、毎月分配型の商品は大幅に縮小されたのです。

 

とはいえ、シニアのニーズが高い商品です。そこで、分配金を隔月で支払う商品が新たに登場してきました。公的年金が偶数月に支給されるので、奇数月に分配金を受け取れるタイプが主流です。

 

つまり、毎月・隔月の分配型投資信託とは、手数料を取られ、信託報酬を毎年支払って、自分のお金を受け取るというシステムなのです。

 

こんな投資信託を使うよりも、年金額を多くしたほうが、よっぽどメリットがあると思いませんか。

 

長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員

 

 

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長尾 義弘

河出書房新社

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