日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は厚生労働省『令和2年度 能力開発基本調査』から、社員教育について考えていきます。

コロナ禍で経営難…それでも人手不足は解消されず

企業経営において、人材は人財とよく言いますが、日本では慢性的な人手不足に陥っています。

 

日本銀行『全国企業短期経済観測調査』によると、2021年3月の「雇用人員判断D.I*」は大企業でマイナス5、中小企業マイナス15でした。コロナ禍の経済情勢によって企業の人手不足感は改善されつつあるものの、決して解消されているわけではなく、またこれから経済が回復していくだろうといわれているなか、再び、人手不足は深刻化するものと考えられています。

 

*雇用人員判断D.I.=「過剰」(回答社数構成比)-「不足」(回答社数構成比)。数値がプラスであれば過剰、マイナスだと不足となる

【雇用人員判断D.Iの推移】

2016年3月:大企業-11、中小企業-20

2017年3月:大企業-151、中小企業-28

2018年3月:大企業-221、中小企業-37

2019年3月:大企業-231、中小企業-39

2020年3月:大企業-201、中小企業-31

2021年3月:大企業-51、中小企業-15

 

出所:日本銀行『全国企業短期経済観測調査』

 

特に中小企業の場合、大企業と比べて資金や設備など、あらゆるものに格差があります。だからこそ大切なのが「社員教育」。初めから優秀な社員を採用できればいいですが、そうはいきません。教育によって、個人として、組織として、スキルアップを果たすことができれば生産性向上にもなりますから、企業にとっては価値ある投資といえるでしょう。

コロナ禍で経営難…社員教育の支出も大幅減

経営者であれば社員教育の重要性を痛いほど知っているでしょう。しかし、なかなかそこにコストをかけられない、という会社も多いのではないでしょうか。

 

厚生労働省『令和2年度 能力開発基本調査』で企業の社員教育への費用の支出状況を見ていくと、Off-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は49.7%と約半数。その内訳は、Off-JTと自己啓発支援の両方に支出した企業は20.2%、Off-JTだけに費用を支出した企業は25.1%、自己啓発支援だけに支出した企業は4.4%でした。

 

*日常の仕事を通じて教育を行うOJTに対し、職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習

 

またOff-JTに支出費用は従業員1人当たり平均0.7万円。コロナ禍で経営が厳しくなるなか、支出は大幅減となりました。

 

【Off-JT費用一人当たりの平均金額】

2011年:1.5万円(0.6万円)

2012年:1.4万円(0.4万円)

2013年:1.3万円(0.5万円)

2014年:1.4万円(0.6万円)

2015年:1.7万円(0.6万円)

2016年:2.1万円(0.5万円)

2017年:1.7万円(0.4万円)

2018年:1.4万円(0.3万円)

2019年:1.9万円(0.3万円)

2020年:0.7万円(0.3万円)

 

出所:厚生労働省『令和2年度 能力開発基本調査』より

※(かっこ)内は自己啓発支援に支出した費用の従業員1人当たりの平均額

 

 

社員教育に費用を捻出する企業は従業員に何を期待しているのかというと、管理職を除く正社員では50歳未満で「チームワーク」がトップで52.8%、「実践的スキル」37.1%、「課題解決スキル」30.9%と続きます。一方で50歳以上では「マネジメント能力」がトップで54.6%。「課題解決スキル」38.2%、「チームワーク」37.3%と続きます。

 

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