日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあたるのは「博士離れ」と「学術論文数」。

2000年代、博士課程への進学者が激減

技術大国、日本。多くの人がそう自負してきたのも、昔の話かもしれません。昨今は日本人がノーベル賞を受賞するたびに、日本の研究力低下が議論されてきました。

 

研究力を支えるのが博士課程の修了者ですが、その進学率は激減。文部科学省『学校基本調査』によると、修士課程から博士課程への進学率は、2020年度は9.4%。いまから40年前の1981年は18.7%だったので、半減したことになります。

 

一方で一度社会人を経験してから博士課程に入る社会人は増加していて、その割合は2019年42.4%と、20年弱で倍増しています。

 

修士課程からの進学率低下、社会人入学の増加、という相反する状況の博士課程ですが、博士課程入学者は2000年代初頭をピークに減少傾向に歯止めがかかっていない状況が続いています。

 

この「博士離れ」の要因としてあげられるのが、「国立大学の法人化」。資金の継続性が担保されなくなってから有期雇用が増加しました。不安定な雇用環境から、博士課程に進学するよりも就職を選ぶ学生が増えたのです。

 

また『ポストドクター等の雇用進路に関する調査』によると、博士号取得後に任期制の職に就いているポストドクター(博士研究員)のうち、翌年もポストドクターを継続している割合は71.2%。大学教員や研究開発職に職種を変更したのは13.0%程度に過ぎません。大学教員・研究職の人材流動性は非常に低く、なかなかポストが空かない……そのような状況から志す人が減っているのです。

 

このような状況は学術論文(科学系分野)数にもあらわれているといわれています。NSF(National Science Fundation)によると、2000年、世界の学術論文数は1位「米国」30万4782件、2位が「日本」で9万7048件でした。

 

最新の2018年では、1位は「中国」52万8263件。2000年は5万3064件でしたから、この20年ほどで約10倍もの数になりました。続いて「米国」42万2808件、3位は「インド」で13万5788件、4位は「ドイツ」で10万4396件。そして5位が「日本」で9万8793件。日本では2006年の11万2127件をピークに減少傾向にあり、ちょうど「博士離れ」の流れとリンクしています(関連記事:『世界「学術論文数」ベスト20を発表!』)。

 

【世界の学術論文数トップ5】

1位「中国」528,263件

2位「米国」422,808件

3位「インド」135,788件

4位「ドイツ」104,396件

5位「日本」98,793件

 

出所:NSF(National Science Fundation)

※科学系分野の学術論文数

 

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