不動産投資には「落とし穴」がいっぱい!
上記の例は投資信託ですからまだわかりやすいのですが、これが不動産になると、話はもっと複雑です。例えば、2000万円で都内のワンルームマンションに投資するケースを考えてみましょう。この部屋を月10万円で賃貸し、10年間持ち続け、10年後に不動産会社に買い取ってもらうというプランを立てました。
この場合、家賃収入は年間120万円ですから、予定通りにいったとして、10年で1200万円になります。そして、10年後に不動産会社が1000万円で買い取るとしたら、この投資は果たして得でしょうか、損でしょうか?
単純に計算すれば、
(家賃収入1200万円+売却価格1000万円)-当初の投資額2000万円=200万円
となりますから、「200万円儲けた!」と思いがちですが、それは大間違いです。
まず、年間いくら儲かったかを計算するには、家賃収入から維持・管理費などの諸経費や税金を差し引かなければなりません。さらに大事なのは、その投資物件の「10年後の現在価値」を予想して計算する必要があることです。
昭和の高度成長期は「土地は値上がりするもの」でしたから、それほど10年後の現在価値を心配する必要はありませんでした。しかし、バブル崩壊を経た今は少子高齢化もあって、不動産価格も大きく変動する時代、目論見どおりにうまくいくかどうかは保証の限りではありません。
さらに言えば、不動産に投資する場合、専門の不動産会社があいだに入るのが一般的です。この場合、「サブリース方式」「一括借り上げ方式」「管理委託方式」など様々なやり方があり、契約内容も異なるので、話はもっとややこしくなります。
例えば、サブリース方式による「家賃保証」を巡って、トラブルが急増していることはご案内の通りです。「保証した家賃が支払われない」といった悪質なケースだけではありません。家賃が支払われている場合でも、実は不動産会社への法外な手数料を差し引かれた金額になっていたというケースも多いのが実態です。また、サブリースでは、いわゆる契約更新料はオーナー側には入ってきません。投資物件が古くなれば、多額の修繕費もかかります(この費用もオーナー側が負うのが普通です)。
他にも、サブリース契約そのものを解約させてもらえない、売約をしようとしたときに、サブリース物件であることで想定売約価格が下がってしまう場合があるなど、想定しないことも起こる場合があります。
事前にしっかりと説明を聞いたつもりでも、素人が複雑な不動産投資の仕組みを理解するのは大変です。不動産会社の営業担当者が説明する「過去の(成功した)投資事例」や「バラ色の(実は大甘の)運用シミュレーション」を鵜呑みにして、うっかり飛びつくと痛い目に遭いかねません。
『初心者が投資先を「株式・債券・不動産」の3つに絞るメリット』で、筆者は株式や債券投資では「価値を生み出す人間のオーナー」になれるかどうかを見極めることが大切だと申し上げました。不動産投資も同じです。
あなたが投資したアパートやワンルームマンションに、本当に喜んで入居してくれる人がいるのか。入居した人が幸せに暮らせるような物件なのか。冷静に判断する必要があるのです。目先の数字を見ただけでは、投資が成功したかどうかがすぐにはわからないのが不動産投資です。そのことを肝に銘じて、知識武装することが何よりも大切です。
◆まとめ◆
インカムゲインとキャピタルゲイン(ロス)から「最終利益」を考える。
市川 雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長