「人生100年時代」といわれています。定年後の避けては通れない課題は「お金」で、3000万円不足するなどといわれていますが、実際のところはピンとこない人も多いことでしょう。この大問題をどう解決すればいいのでしょうか。定年退職したサラリーマンも活用できる付加年金、国民年金基金などの活用法をお届けします。本連載は長尾義弘著『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

iDeCoとの違いは「確定拠出」と「確定給付」

まずは、基本的な制度についてご説明しましょう。iDeCoと国民年金基金の大きな違いは、「確定拠出」と「確定給付」です。

 

iDeCoは、自分で運用先を決めます。運用先は定期預金や投資信託が中心です。運用次第で資金は増えたり減ったりしますから、年金額がいくらになるかはわかりません。増えても減っても自己責任です。

 

国民年金基金は、いくらで運用するかが決まっています。申し込んだ時点の予定利率が最後まで続きますから、年金額がわかります。現在の予定利率は1.5%と、銀行の定期預金よりはるかに高いのです。

 

ただ、iDeCoの2017年の平均運用利回りは3.25%に比べると、低くなります。また利率が固定されているため、インフレで貨幣価値が下がると損をする恐れがあります。

 

税制優遇については、ほぼ同じです。どちらも掛金の全額が、所得税・住民税の控除対象になります。年金を受け取る際も、退職所得控除や公的年金控除が受けられます。

 

年金の受け取り方ですが、iDeCoは一時金、または確定型年金になります。わずかながら個人年金保険の商品があり、終身型を選ぶこともできます。確定型年金は、5年、10年、15年といった具合に、受け取り期間を選べます。

 

国民年金基金も、確定型と終身型から選ぶことができます。ここでおすすめしたいのが、終身型です。

 

毎月一定額の年金が入ってくれば、老後生活の安定と安心につながります。しかも、最大のメリットは長生きすると、払い込んだ金額より受け取りが多くなることです。

 

では、iDeCoと国民年金基金の比較をシミュレーションしてみましょう。

 

●iDeCo…月額5万円(年間60万円)を年3%で30年間運用した場合
60万円×30年=1800万円(元本)+1113万6844円(運用収益)=2913万6844円

●国民年金基金…男性30歳~60歳まで。1口目B型1口、2口目以降B型9口の合計月額5万1590円(年間61万9080円)を払い込んだ場合
65歳から年間136万1976円を受け取れます(約136万2000円)。

136万2000円×22年=2996万4000円

 

このように87歳まで受け取ると、国民年金基金のほうが上まわるのです。

 

男性の平均寿命を越えているところが微妙ですが、2025年には約85歳になるという予測もあります。もし100歳まで生きたとしたら、35年分の総額は4767万円になります。長生き時代にはiDeCoより有利だと思いませんか。

 

iDeCoが扱う個人年金保険の商品は予定利率が低いので、国民年金基金に軍配が上がります。

 

さらにもう一つ、国民年金基金のほうが有利な点があります。

 

iDeCoは60歳で積立が終了しますが、国民年金基金は60歳以降も加入が可能です。国民年金に任意加入していることが条件ですが、節税しながら年金を増やしていけます。

 

iDeCoのみに絞らず、国民年金基金も検討してはいかがでしょうか。
 

 

長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員

 

 

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