「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、「家賃保証の落とし穴」について語っている。
月収20万円だったが…「10万円」もの部屋を借りると
とても便利に思える家賃保証会社ですが、実は大きなデメリットがあります。それは、賃借人が身の丈を超えた部屋を借りることを食い止める心理的なハードルを引き下げてしまうということ。連帯保証人が果たしてきた、口うるさいお目付役としての役割が欠けているのです。
例えば、月収20万円の我が子から、10万円の部屋を借りたいから保証人になってくれと頼まれたら、普通の親なら「身の程を知りなさい!」と突っぱねるはずです。そうなれば、たとえ不本意であっても、今の自分に相応だと思われる家賃の物件にせざるを得ないでしょう。わざわざ小言を言われたくはないし、そのような物件を借りることを最初から諦めることも多いはずです。
ところが、相手が家賃保証会社になると、そのハードルが一気に下がります。
ちょっと無理かな、と思うレベルの物件でも、それを借りたいと意思表示をする上での心理的なハードルは、連帯保証人を相手にするよりグッと低くなります。また身の丈以上の物件であっても、家賃保証会社の審査が通ってしまったら払える気になってしまうものです。
各社の基準発表がないので断言はできませんが、家賃保証会社の審査の基準はそれほど厳しいものではないというのが私の印象です。そもそも、家賃保証会社だってビジネスです。契約件数を増やさなければ、経営が成り立ちません。競合となる保証会社はたくさんあるので、自分のところが断れば、別の保証会社に客を取られるだけです。
もし事故(滞納)があれば、全力で督促して回収すればいいと考え、審査を厳しくしていられないのでしょう。その結果、背伸びした物件が簡単に借りられてしまうのです。
OAG司法書士法人代表 司法書士
株式会社OAGライフサポート 代表取締役
30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。
登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
トラブル解決の際は、常に現場へ足を運び、訴訟と並行して賃借人に寄り添ってきた。決して力で解決しようとせず滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、多くの家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士でもある。
また、12年間「全国賃貸住宅新聞」に連載を持ち、特に「司法書士太田垣章子のチンタイ事件簿」は7年以上にわたって人気のコラムとなった。現在は「健美家」で連載中。
2021年よりYahoo!ニュースのオーサーとして寄稿。さらに、年間60回以上、計700回以上にわたって、家主および不動産管理会社向けに「賃貸トラブル対策」に関する講演も行う。貧困に苦しむ人を含め弱者に対して向ける目は、限りなく優しい。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』(どちらもポプラ新書)がある。
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連載GGO大ヒット連載ピックアップ~『家賃滞納という貧困』