税務調査と聞くと、国税局査察部の通称名である「マルサ」をイメージしますが、マルサが税務調査を担当するのは悪質な納税者に限定されるため、一般の人がマルサの調査を受けることはほとんどありません。相続税や所得税を申告した人が調査を受ける際、相対するのは「国税局資料調査課」。税務調査を担当する部署の中でも、特に優秀な職員が集められている部署です。今回、この「国税局資料調査課」について解説していきます。

相続税申告で国税局資料調査課の調査対象者となる条件

税務署に提出された相続税の申告書の中でも、国税局資料調査課が調査担当となるのは、限られた申告書のみです。

 

■財産債務調書の提出基準を満たしている被相続人

国税局資料調査課が調査をする相続税の申告書は、いわゆる富裕層に該当する人です。国税庁は富裕層の明確な基準を示していませんが、「財産債務調書」の提出基準を満たしている人は、富裕層に該当していると考えられます。

 

<財産債務調書の提出要件>

・経常所得金額の合計額が2,000万円超

・資産が3億円以上または1億円以上の国外転出特例対象財産を保有

 

相続税の場合、財産債務調書の提出基準に該当する被相続人(亡くなった人)の相続財産は、5億円以上になることが多いです。そのため5億円以上の相続財産を申告した相続税の申告書は、国税局資料調査課の調査対象となる可能性があります。

 

■国外財産調書の提出基準を満たしている被相続人

近年では5億円以上の相続財産を保有している人以外に、海外資産を保有している人も国税局資料調査課の調査対象となっています。

 

現在、国外に5,000万円を超える財産を保有している人は、毎年「国外財産調書」を提出しなければなりません。そのため国外財産調書の提出基準を満たしている人は、国税局資料調査課の調査対象者となる可能性があります。

 

<国外財産調書の提出基準>

・居住者(非永住者を除く)

・国外財産の合計額が5,000万円超

 

また国税庁は今後、海外の預貯金の入出金や不動産賃貸に伴う取引記録など、海外資金の流れが確認できる帳簿の保管を国外財産調書提出義務者に求める予定です。国外財産調書とは違い、帳簿保管は義務ではなく任意となる見込みですが、帳簿管理をしていない海外資産保有者に対しては、一層厳しい調査の実施が想定されます。

 

■多額の申告漏れや調査するのに相当数の日数が必要な申告書

国税組織が行う税務調査は、不正を取り締まることが目的であり、税務署の調査でも同様です。

ただ多額の申告漏れや脱税が判明した場合は証拠収集にも相当の日数が必要となるため、税務署の担当者だけでは対応できません。そのような場合、国税局資料調査課は税務署の要請に応じ、税務署の代わりに調査を実施することもあります。

増差税額が見込めない申告書は調査しない

国税局資料調査課は、国税組織の中でも税務調査での結果(増差税額)が求めれる部署です。そのような環境に置かれている国税局資料調査課は、申告漏れが見込まれるものを中心に調査をするため、増差税額が見込めない申告を調査することはありません。

 

そのため相続税の申告書を正しく作成して申告すれば、国税局資料調査課からの調査を受ける可能性は低いです。

 

相続税は、税金の中でも特に専門性が高い税目です。税務調査を受けないためには、相続税を専門としている税理士事務所に依頼し、法律範囲内で節税することを推奨します。

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧