コロナ禍、地価上昇も人口減は止まらない
再び輝きを取り戻した感のある熱海。近年はインバウンド需要の広がりもあり、富裕層が好む別荘地としても、最注目されてきました。そんな熱海にも2020年、新型コロナウイルスの影響が……。2020年の宿泊客数は約185万人と過去最低を記録したのです。多くの観光地が同じような状況でしたが、ひとつ、熱海はほかとは違うところがありました。
それは公示価格。2020年、全国的に全用途で下落したことは大きなニュースになりました。そのようななか、熱海では住宅地や商業地で、上昇幅は大きく減少したものの、価格上昇をキープしたところも。
たとえば熱海駅まで徒歩4分の高台の住宅地である「静岡県熱海市春日町」は前年から1.26%上昇。熱海駅まで徒歩14分、飲食店も多い商業地「熱海市銀座町」は前年から0.65%の状況を記録しています。東京都心でも軒並み前年比割れを記録しているなか、かなり健闘しているといえるでしょう。
観光客が激減したのにも関わらず、地価の好調をキープしたのは、コロナ禍によるリモートワーク普及が起因しているといわれています。
リモートワークが一般的になったとはいえ、「どこにいても仕事が成り立つ」、というケースは珍しく、実際は「何かあれば東京に行かなければいけない」、という人のほうが多いでしょう。
そのような働き方の場合、東京へのアクセスが重要になってきます。その点、「新幹線を使えば40分ほどで、少し無理すれば普通列車でも行ける」、という立地は魅力です。観光地でありながら、東京から程よい距離、というのは、どんなに工夫を凝らしたところで、どこでも真似できるものではありません。
ただ熱海市の人口は、2021年4月で3万5671人で前年比97.9%。熱海地区に限っても1万9491人で、前年比97.4%。テレワークの拡大で中古マンションを中心にニーズが高まったといわれていますが、セカンドハウスのようなニーズが多かったのか、定住には至っていないようです。
【熱海市の人口推移】
※数値左2020年4月、数値右2021年4月、(かっこ)内世帯数
総数:3万6417人(2万1588世帯)/3万5671人(2万1417世帯)
熱海地区:2万0011人(1万2422世帯)/1万9491人(1万2208世帯)
出所:熱海市ホームページ
観光地として、また新たにリモートワーク先として、注目を集める熱海。その期待感から地価は上昇をキープし、不動産販売は好調です。しかし人口減少の波には逆らえず、不動産投資家の間では不安視する向きも。期待感が人口減の影響を上回り続けるか……「熱海」はいま、正念場といえるかもしれません。
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