温泉観光地「熱海」が没落から復活するまで
東京駅から東海道新幹線に乗ること、40分強。到着するのは、人気観光地、静岡県「熱海」。新幹線を使わなければ、JR東海道本線で1時間45分、車でも2時間ほどの距離です。
日本三大温泉地のひとつに数えられ(ほかの2つは、和歌山県白浜温泉と、大分県別府温泉とされる)、開湯は490年と伝えられるほどの由緒正しさ。徳川家康が当時に訪れたことで、広く知られるようになり、江戸時代から文化人が訪れるようになりました。
明治時代には皇族や政財界の重鎮、著名な文化人が別荘を構えるようになり、昭和時代は憧れの新婚旅行先のひとつに。そんな一大観光地であり、富裕層を中心に愛された別荘地に、変化が訪れたのは2000年代。旅行のスタイルが大きく変化したことで、熱海をはじめ、多くの温泉地が苦戦を強いられるようになったのです。
いま社員旅行などで何十人単位で旅行に行くことはあるでしょうか。昔は慰安旅行などと称して、バスを貸し切り、社員一同温泉地へ。広い宴会場でどんちゃん騒ぎ……よくある会社の風景でした。会社単位のほか、町内会で、学校のPTAでと、さまざまな団体がこぞって人気観光地(その多くが温泉地)に旅行で訪れていたわけです。
そんなスタイルが、バブル崩壊後、一気になくなっていき、旅行の主体は個人旅行へ。それまで団体客を中心に受け入れたいた観光地には、個人客を楽しませる要素がなく、急激に観光客離れが進みます。
2001年(平成13年)、熱海の観光レクレーション客数は年間530万人ほどでしたが、2010年には300万人を割り込み、2011年、震災の影響もあり246万人に。10年間で半分にまで落ち込みました。多くの団体客を受け入れたきた大型観光ホテルは閑古鳥がなき、次々と廃業。駅前はシャッター商店街と化しました。あまりの衰退ぶりが当時はニュースになるほどでした。
そんな熱海がV字回復を遂げたと話題になったのが、2014年から2015年にかけてのこと。回復の理由は、2017年、観光庁による『観光白書』に記されています。
まず長期的に低迷する状況下で、熱海市は「熱海市財政危機宣言18」と称し、地元事業者や住民等に市政への協力依頼を行いました。そのうえで、若年層をターゲットにしたプロモーションを展開していきます。過去の熱海を知る層よりも、熱海を知らない、先入観のない若年層を狙うほうがいい、という声を取り入れたものでした。
さらにやる気のある民間プレーヤーによって、個人客を意識した宿泊施設のリニューアル、コンテンツづくりが展開されていきます。シャッター街になっていた商店街で起業する若者も現れ、次第に街にも活気が戻り、若年層を中心に観光客数は300万人台に回復しました。
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