両親のうち父が先に亡くなり、その後に母が亡くなった場合、父の相続を「一次相続」、母の相続を「二次相続」といいます。一次相続から二次相続までの期間は当然ながらまちまちですが、なかには一次相続に係る相続税の申告期限である10ヵ月以内に遺産分割協議が成立しないまま二次相続が発生するケース(数次相続)も珍しくはありません。今回はそのような数次相続が発生した場合における遺産分割の留意点について、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が解説します。

亡くなった母に父の遺産を相続させる!?

【事例】

被相続人:父(令和3年1月死亡)

相続人:母(令和3年5月死亡)、長男、長女

 

父の財産:1億5,000万円(内訳:土地1億円、建物200万円、金融資産4,800万円)

※土地建物は、父母が二人で暮らしていた自宅。(長男・長女はそれぞれの持家に居住)

 

母の財産:金融資産1,000万円

 

父の財産について母・長男・長女で遺産分割協議をしていたところ、協議成立前に母が亡くなってしまったというケースです。

 

不幸が続くことも珍しくない…(画像はイメージです/PIXTA)
不幸が続くことも珍しくない…(画像はイメージです/PIXTA)

 

この場合、父の財産について、母が持つ遺産分割協議に参加する権利は長男・長女が引き継ぐことになりますので長男・長女二人によるの話し合いにより父の財産に係る遺産分割協議を成立させることができます(父母に前妻前夫との間の子などがおらず、一次相続と二次相続で相続人が同じ、事例では長男・長女、である場合が前提です)。

 

このとき、父の財産の全部、または一部を母が相続する内容にすることも(相続しないことも)可能です。

 

「どのみち母から子が財産を引き継ぐことになるので、亡くなった人に財産を相続させても意味がないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、発生する相続税などの税金を比較することでその意味は見えてくることになります。

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例に適用について

まず、相続税の計算において大きな減税効果を生む2つの優遇制度に着目します。

 

《配偶者の税額軽減(相続税法19-2)》

配偶者が相続する財産が1億6,000万円又は法定相続分相当額のいずれか大きい金額以下であれば配偶者に相続税はかからない制度

 

《小規模宅地等の特例(租税特別措置法69-4)》

配偶者や同居親族等が被相続人の自宅の土地を相続することで土地評価額(330㎡が限度)が8割減額される制度

 

これらの制度ですが、事例のように亡くなった人に財産を相続させるようなケースでも適用を受けることができると下記基本通達により定められています。(括弧内)は事例の登場人物。

 

「相続税法基本通達19の2-5(抜粋)」配偶者の税額軽減関係

相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人等(母・長男・長女)によって分割される前に、第1次相続に係る被相続人の配偶者(母)が死亡した場合において、第1次相続により取得した財産の全部又は一部が、第1次相続に係る配偶者(母)以外の共同相続人等(長男・長女)及びその配偶者(母)の死亡に基づく相続に係る共同相続人等(長男・長女)によって分割され、その分割によりその配偶者(母)の取得した財産として確定させたものがあるときは、配偶者の税額軽減の規定の適用に当たっては、その財産は分割によりその配偶者(母)が取得したものとして取り扱うことができる。

 

「租税特別措置法基本通達69の4-25(抜粋)」小規模宅地等の特例関係

相続又は遺贈により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が共同相続人等(母・長男・長女)によって分割される前に、第一次相続に係る共同相続人等(母・長男・長女)のうちいずれか(母)が死亡した場合において、第一次相続により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が、その死亡した者(母)の共同相続人等(長男・長女)及び第一次相続に係るその死亡した者(母)以外の共同相続人等(長男・長女)によって分割され、その分割によりその死亡した者(母)の取得した特例対象宅地等として確定させたものがあるときは、小規模宅地等の特例の規定の適用に当たっては、その特例対象宅地等は分割によりその死亡した者(母)が取得したものとして取り扱うことができる。

 

次ページ遺産分割方法に応じた相続税額の比較

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧