(※写真はイメージです/PIXTA)

ドクターが思うほど、クリニック経営は難しくありません。レセプトデータを基にクリニックの収益モデルを分析することで、「なにを頑張ればいいか」「なにを伸ばせばいいか」「なにを意識すればいいか」という具体的な指針が浮き彫りになります。ここでは、レセプトデータを使って差別化に成功したクリニックの実例を見ていきましょう。

「専門性」で差別化を図るクリニックが増加したが…

2018年に始まった「新専門医制度」において、全人的に患者を診察する「総合診療専門医」が新設されましたが、日本は欧米に比べて「GP(general practitioner)=総合医」制度の整備が遅れているといわれています。

 

日本医師会が提唱する「かかりつけ医」という考え方は広く知られていますが、明確な資格があるわけでもないので、大半の開業医(いわゆる町のお医者さん)がそれに該当します。そのため、競争にはさらされにくい反面、差別化が図りにくいというデメリットがあります。

 

近年、消化器内科や糖尿病内科、循環器内科等、専門性を売りにしたクリニックが増えているのは、市場が成熟しているがゆえに、細分化しないと特色を打ち出せない業界事情のせいでしょう。

レセプトを活用し、5年間で「糖尿病専門」に転身成功

専門性の高いクリニックの実例として、糖尿病を専門とするAクリニックをご紹介しましょう。掲げている看板は「XX内科クリニック」ですが、院長は「糖尿病しか診ない」というとがったスタンスを貫いています。

 

その院長は当初から「いずれは糖尿病専門クリニックにしたい」というビジョンを描いていましたが、開業直後はそういうわけにはいきません。なんでも診ますのでどんな方でもいらしてください、と門戸を広げていました。

 

それでも当初から、来院患者の中で糖尿病の患者だけを重点的にピックアップし、フォローし続けたことが功を奏し、月に10~20人だった来院患者数が5年後には月に500人(全体の約95%)を数えるまでになり、そのタイミングで一般診療の患者を断るようになったのです。

 

クリニック独自の取り組みとして、検査会社から送られてきた検査データの数値が示す意味等について説明を加え、補足資料とともに患者に渡していたこともリピート率の向上に役立っていました。院長自ら「患者さんの満足度を高めるためにやれることを考えないといけない」とおっしゃっていたことが印象に残っています。

ただし、レセプトが有効でない診療科目も…

レセプトデータを活用した成功事例についてお話ししましたが、どの診療科目においてもその価値を発揮できるわけではありません。

 

慢性期疾患を扱う内科や整形外科等、「特定疾患療養管理料」や「リハビリテーション料」を算定するリピーター患者が経営の柱となる診療科目においてはレセプトデータが有効になります。一方で、急性期疾患を扱う小児科、耳鼻科、皮膚科では「いかにして新しい患者(特に子ども)を集めるか」が生命線になるので、レセプトデータは経営指標として活用しづらいのです。

 

別の視点から見ると、内科、整形外科はドクター以外(看護師や栄養士、検査技師等)が診療に関わり、収益の最大化を図ろうとするのに対して、小児科、耳鼻科、皮膚科は収益の大半をドクターが稼ぎ出す経営モデルなのです。いずれにしても、これらの科ははっきりと色分けされます。

 

耳鼻科を例に挙げてみましょう。睡眠時無呼吸症候群をはじめ、慢性疾患の長期的なフォローを要する患者も一定数いますが、基本的には急性期疾患で、患者属性としては中学生までの子どもが中心です。成長に伴い症状が落ち着くと通院機会はなくなるので、認知が広がるまでは、広告宣伝頼みになります。ホームページの制作や駅看板の露出は必須です。口コミを広げるためのリーフレットの作成も検討すべきでしょう。

 

 

柳 尚信

株式会社レゾリューション 代表取締役

株式会社メディカルタクト 代表取締役

 

 

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※本連載は、柳尚信氏の著書『クリニック経営はレセプトが9割』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

クリニック経営はレセプトが9割

クリニック経営はレセプトが9割

柳 尚信

幻冬舎メディアコンサルティング

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