ウエディングや企業プロモーションなど、感動的な表現に重点を置いた映像制作を行いながら自社運営の映像スクールを主宰する村崎哲也氏の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』より一部を抜粋し、感情を揺さぶる映像表現のしくみについて解説していきます。

「ほかの表現媒体」と「映像表現」2つの大きな違い

映像を文章、絵画、写真、音楽など、ほかの表現媒体と比較した場合、大きく2つの特徴があります。

 

●特徴1〈擬似体験を与える〉
再現性が高く見たままの光景を視聴者に伝えることができる点が映像の最大のメリットです。スポーツ中継のように離れた場所でも現場の臨場感を感じさせ、その場にいるような疑似体験を提供することができます。

 

● 特徴2〈時間と空間をデザインできる〉
映像は時間経過による変化の表現です。音楽・舞踏・演劇なども時間変化による表現ですが、映像は画面変化により目の前の空間を一瞬で切り替えることができます。この画面変化による意味づけと感情の揺さぶりがほかの表現媒体にはない映像特有の表現といえるでしょう。

メリットの多い「映像表現」…デメリットはあるのか?

表現媒体としてメリットの多い映像ですが、当然ながらデメリットも多く存在します。

 

●デメリット1〈視覚と聴覚を一定時間拘束してしまう〉
一瞬で認識できる写真や、聴覚だけの音楽、自分のペースで読み進められる文章と違い映像は視覚と聴覚を拘束します。これは視聴者の人生から一定時間を奪う行為といってもいいでしょう。ですから映像表現者は奪った時間と同等以上の価値を視聴者に提供しなければなりません。

 

●デメリット2〈「伝えたくないこと」も伝わってしまう〉
映像はとても情報量が多く伝わりやすい表現媒体です。しかし「情報量が多い」ということは考えなければならない量も当然ながら多いのです。たとえば「女性の美しさ」を伝えようとしても背景に目がいく、肌の荒さが目立つ、カメラの揺れが気になるなど、さまざまな要素を処理しなければ伝わる表現にはなりません。

 

過去にはテレビモニターやスクリーンなどの視聴媒体が必要というデメリットが存在しましたが、携帯端末でサクッと動画が見られる現代では大きなデメリットとはいえないでしょう。

映像表現で重要なのはセンスよりも「思考力」

コンテクストとは「文脈・前後関係・背景」を意味しますが、本記事では「時間軸におけるカットやシーンの関係性」などの意味合いで使用しています。映像は写真と違い、どれだけ素晴らしい撮影ができても、ただ並べただけでは素晴らしい映像作品にはなりません。

 

素材の質よりもどの順番で並べるかというコンテクストが映像表現の要になります。

 

映像で人の感情を動かすことは「センス」や「想い」でなんとかなるものではありません。映像表現とは結局のところ物理学と脳科学の応用です。不特定多数の人たちに効果的に「伝わる」映像を作るためには、センスやテクニックよりも物事を数学的に捉えることができる思考力が必要不可欠です。

 

映像は英語で「Image」です。映像表現者はイメージという曖昧でフワッとしたものを作っています。しかしフワッとした頭脳では作れないものなのです。

 

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村崎 哲也
1979年岐阜県高山市生まれ、名古屋ビジュアルアーツ放送映画学科卒業後、数社の映像プロダクションでの活動を経て2005年に独立。ウエディングや企業プロモーションなど、感動的な表現に重点を置いた映像制作を行いながら自社運営の映像スクールを主宰している。

 

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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