今回は、相続の基礎知識について見ていきましょう。※本連載は、弁護士・叶幸夫氏と、税理士・山下薫氏の監修書籍、『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、今から心得ておきたい新時代の相続・贈与の基礎知識を紹介します。

遺産を受け取るためにはマイナンバーの記載が必要

マイナンバー時代になると、個人の財産の管理、相続・贈与のしかたや税金関係で、どんな影響が出てくるでしょう。

 

ひと言で言えば、今まで意外に甘く考えていた財産の動きが、細部まで正確にお役所に把握されるということです。ということは、いい加減な知識で不用意な相続や贈与をすると、思わぬ税金が取られて泣くことにもなりかねないということです。

 

つまり、マイナンバー時代にこそ、まずは相続・贈与のきちんとした基礎知識を確認しておく必要があります。

 

ご存じのように、たとえば一家の父が死ぬと、法的にはその瞬間に相続が開始されますが、自動的に遺族が財産を受け取れるわけではなく申告書などの手続きが必要です。この申告書に、故人つまり被相続人と、財産を受け取る相続人全員のマイナンバーを記載することになったのです。

 

[ここがポイント]

平成28年1月1日から、相続開始の申告書には、死亡した被相続人と相続することになった人全員のマイナンバー記載が必要です。

配偶者と子ども、孫には「相続権」がある

そんなマイナンバー時代だからこそ、より正確につかんでおきたい基礎知識の第一は、財産を遺す人=被相続人から、財産を受け取ることのできる人=相続人はだれかということです。

 

故人の配偶者や子ども、孫に相続権があるのは常識としてわかりますが、それ以外の人はどこまでが相続人になるか、民法では、相続することができる人に一定の制限が設けられています。

 

整理すると、まず故人の財産形成に寄与している被相続人の配偶者には相続権があります。それ以外については、血縁関係の濃い順番に範囲が定められています。

 

第一順位 被相続人の子ども=直系卑属。

第二順位 被相続人の両親=直系尊属。子どもがいないとき。

第三順位 被相続人のきょうだい。親も子どももいないとき。

 

つまり、配偶者や子ども、孫、ひ孫以外では、血のつながった親ときょうだいまでが相続権を持つと覚えておくといいでしょう。血のつながりのない、子どもの配偶者は相続権を持てないのです。

 

[ここがポイント]

マイナンバーの通知書は何百万通も戻ってきているようです。相続権を行使するためにも、マイナンバーを把握しておきましょう。

 

また、第一順位である子どもがすでに死亡している場合には、その子ども、すなわち被相続人の孫に当たる人物に相続権が移ります。この相続人のことを代襲相続人と言います。

 

さらに、孫までもが死亡していて、孫に子どもがいるときは、その人物すなわち、被相続人のひ孫が代襲相続人になります。

 

もし、それらに該当する人物がいなくて、きょうだいも死亡している状況だったら、きょうだいの子ども、すなわち被相続人の甥姪が代襲相続人ということになります。しかしこの場合は、その子どもにまで代襲相続権が及ぶことはありません。

 

このように相続権を有する人物は、故人と血のつながりがある場合に限られています。ですから、被相続人の財産形成に忠実な会社の部下の貢献があったとしても、相続権を持つことはできません。

 

もっとも、これにも例外があります。それはのちの記事で述べますが、被相続人と養子縁組をしたときです。なお本連載では、兄弟姉妹は「きょうだい」と表記します。

 

[ここがポイント]

子どもが親の再婚に反対する一因としては、赤の他人の後妻が多額の遺産を受け取るのが惜しいということもあるでしょう。再婚するときには配慮が必要です。

 

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    本連載は、2016年2月29日刊行の書籍『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    叶 幸夫・山下 薫

    徳間書店

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