親の遺した借金を相続しない――「相続放棄」「限定承認」の概要

今回は、親の「負の遺産」の相続を避けるための手続きを見ていきます。※本連載は、弁護士・叶幸夫氏と、税理士・山下薫氏の監修書籍、『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、今から心得ておきたい新時代の相続・贈与の基礎知識を紹介します。

相続放棄・限定承認ともに「期限」に注意

親の遺す財産は、ありがたいものばかりではなく、ときに借金など〝負の遺産〟もありえます。もちろんこれは相続したくありませんから、次のような手立てで逃れる方策を講じます。

 

一つは「相続放棄」です。これは、相続財産のすべてを相続しないということです。したがって、預貯金や不動産も相続できなくなります。

 

<ここがポイント>

負の遺産を継ぎたくないときには、「相続放棄」をすればいいのですが、そうすると、プラスの財産も受け継ぐことができなくなります。

 

もう一つは、「限定承認」です。プラスの財産から負の遺産をマイナスした残りを相続することを言います。これは、相続人全員で行う必要があります。負の財産のほうが多い場合は、遺産の限度においてのみ返済の義務を負うことになります。

 

<ここがポイント>

相続放棄以外に、相続を「限定承認」する方法もあります。負の遺産を精算した残りの財産を相続することです。プラス遺産が多いときにはこのほうがいいでしょう。

 

相続放棄も限定承認も3か月以内にしないと、「単純承認」と見なされるので要注意です。申述書の提出先は家庭裁判所です。

「相続放棄」しても受け取れるお金とは?

ただ、相続放棄には、さまざまな注意点があります。

 

●相続放棄は、相続人それぞれの考え方で決めてもいい

 

親の作った借金でも、返済する余裕があるなら、返したほうがすっきりするという人もいれば、そうではない人もいるでしょう。

 

●葬式費用を、故人の預貯金で支払ったら相続放棄はできない

 

マイナンバーが導入されれば、凍結されないうちに葬式費用を引き出してもバレてしまうと思われます。そのときは、「単純承認」と見なされて、負の遺産も引き継がなければならないことになります。

 

●第1順位の子どもが相続放棄をしたら、孫も相続人にはなれない

 

孫は、親の代襲相続人なので、子ども(孫の親)がしたことをくつがえすことはできません。

 

●相続放棄をしても生命保険金は受け取れる

 

生命保険金は、受取人が相続人と明記されていれば、相続財産とは見なされず、相続人固有の財産として保険金を請求することができます。ただし、特定のだれかに指定されていれば、むろん、指定された人だけに受け取る権利があります。

 

なお、故人(被相続人)が保険金の受取人になっていた場合は、その受取権を相続しなければ受け取れないので、相続放棄をすると保険金は受け取れません。

 

●死亡退職金は、受取人が定められていれば受け取れる

 

死亡退職金を誰が受け取るのかが、会社の退職金に関する内規で明記されていれば、相続の対象にはなりません。相続放棄をしていても受け取れます。定年や退職で受け取ることが前提の退職金ですから、明記されていないことがあるかもしれません。そのときは被相続人の財産と見なされ、受け取ることはできなくなります。

 

なお、配偶者や第一順位の相続人が相続放棄をすると、相続権は第二順位の親、第三順位のきょうだいに移ります。したがって、相続放棄をしたときには、これらの人物にも知らせて、放棄するかどうかを決定してもらうことです。

 

<ここがポイント>

相続放棄も限定承認も、3か月以内に手続きをしないと、「単純承認」と見なされ、負の遺産を受け継がなければならなくなります。

 

弁護士

京都大学法学部卒業。昭和52年東京弁護士会に登録。半世紀に及ぶ幅広い弁護士活動の中で、社会的にも大きな影響を与えたさまざまな事案に関わり、その手腕を評価される。とくに個人・法人の個別案件に関しては、法律問題になる前の“予防法学”的な指導を心がけ、「弁護士のいらなくなる弁護士」を目指す。近年ではマイナンバー制度など法律環境の変化を的確に読み込んだ財産管理、相続・贈与・遺言などに関しても親身な相談に定評がある。

著者紹介

山下税理士事務所 所長・税理士

1964年愛知県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業後、 キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン(株))入社。 結婚、退職、出産を経て、1999年税理士試験合格。 2001年横浜市にて税理士登録・開業。 個人の相続税、中小企業の税務・会計コンサルティングの他、 他士業との提携によるワンストップサービスを行っている。

著者紹介

連載「マイナンバー時代」に必要な相続・贈与の基礎知識

本連載は、2016年2月29日刊行の書籍『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

マイナンバーでこう変わる! 遺産相続:遺言書の書き方から 節税対策まで

マイナンバーでこう変わる! 遺産相続:遺言書の書き方から 節税対策まで

叶 幸夫・山下 薫

徳間書店

相続や贈与のことなど、まだ先のことと思っている中年世代にとって、非常事態が発生した。それはマイナンバー制度が始動して、相続や贈与の対策が、一変したからだ。 今までは、「まあ露見することはないだろう」とタカをくく…

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