血のつながりの「濃さ」が問題に・・・
たとえばこんな場合があります。ある男性が闘病の末死亡しました。両親はすでに死亡していて、しかも夫婦の間には子どもがいなかったので、妻と彼のきょうだいが相続人になりました。
民法の規定に従い、妻には4分の3の相続権があります。残りの4分の1をきょうだいが分けることになったのですが、ここに問題が起きました。じつは、きょうだい3人のうち、末の弟は、亡くなった被相続人と母親が違うのです。実の母親が亡くなってから、父が再婚した相手との間に生まれたのがこの弟です。
民法では、こうした場合、末の弟の相続権に差をつける決まりがあります。つまり、父親も母親も同じきょうだいと、父親のみが同じというきょうだいでは、その相続権に差がつくということです。
父親も母親も同じというきょうだいを「全血きょうだい」と言い、父親か母親か、どちらか一方だけが同じというきょうだいのことを「半血きょうだい」と言います。
<ここがポイント>
両親ともに同じきょうだいを「全血きょうだい」と言い、父か母かどちらかが違うきょうだいを「半血きょうだい」と言います。
半血兄弟に財産を多く渡したい場合は「遺言書」を遺す
この差はどの程度なのでしょうか。半血と呼ばれているその文字通り、半血きょうだいには、全血きょうだいの半分の相続権しかありません。
<ここがポイント>
被相続人に子どもがいない場合、そのきょうだいが4分の1の相続権を持ちますが、「半血きょうだい」には、「全血きょうだい」の半分の相続権しかありません。
それを割合で示せば、
●全血きょうだい2人の分
妻の相続分の残り4分の1×5分の2で、それぞれ、相続財産の10分の1ずつ。
●半血きょうだいである末の弟の分
妻の相続分の残り4分の1×5分の1で、相続財産の20分の1。
<ここがポイント>
全血きょうだいが2人、半血きょうだいが1人の場合、全血きょうだいの相続分は10分の1、半血きょうだいの相続分は20分の1になります。
ということで、民法では、こうしたきまりがありますが、やはり、今までも述べたように、民法がすべてに優先されるということではありません。
たとえば、故人が、早くから家を出てしまって日頃の付き合いもなくなっている兄たちに財産を渡したくないと思っているとします。それよりも、ともに暮らした期間が長く、可愛がっていた腹違いの弟に4分の1の財産すべてを渡したいと思うのであれば、その旨の遺言書を書いておくことです。
きょうだいには、遺留分を請求する権利がありません。したがって、弟への思いを、財産を渡すという形で果たすことができるのです。
また前回、事実婚の配偶者に全財産を渡したいときも遺言書がものを言うと述べました。これは、もちろん、婚姻関係にある配偶者にも適用できます。
たとえば、夫婦の間に子どもがいない場合、4分の1の相続権はきょうだいが持ちます。きょうだいが死亡していれば甥姪が代襲相続権を持ちます。疎遠になっている甥姪に渡したくなければ、遺言書を書いておくことです。