「仕事用のペルソナ」がハマってうまくいったケース
地を出して、それがたまたま、仕事にも合っているとは限らないからです。私の知人の例を分かりやすさのため、少しだけ脚色してお話ししましょう。
田中さんは、大学の数学科を卒業して、わりと社風が堅いメーカーに新卒で入社したサラリーマンでした。ところが、婿養子になって苗字が変わったのをきっかけとしたのか、あるいは今後のビジネス人生は「イノベーション」で生きていくと決めたのか、あるときガラリと仕事上のペルソナを変えてきました。
それ以来、田中さんは、ことあるごとに「イノベーション」の大切さを説く、イノベーションの伝道師になったのです。田中さんは「イノベーション」を口癖にして、ちょっと変わった「イノベーションお兄さん」というペルソナをつくり上げていきました。
田中さんは、オンライン会議システムZoomに表示される名前も「田中イノベーション」ですし、「はい、皆さん、ご一緒に、せーの、イノベーション!」という一発ギャグももっています。
キャラが立っていて、見た目も目立つようにいつも赤い帽子をかぶっています。いつもにこにこと楽しそうで、そのキャラがあまりにも有名になって、大手企業のイノベーションチームに引き抜かれて転職しました。
今は、ベンチャー企業を集めてピッチイベントをリードしています。田中さんは、自分で考えて「仕事用のペルソナ」をつくって成功した例です。
おそらく田中さんは、プライベートでは「イノベーション」を口癖にしていませんし、もしかすると家庭ではまったく異なるペルソナで過ごしているかもしれません。しかし、そんなことは田中さんと仕事をする人たちにとってはどうでもいいのです。
必要とされていないペルソナをかぶって仕事をする必要はないわけで、それでしたら、一緒に仕事をする人を喜ばせるためにも、田中さんのように新たなペルソナをつくってしまえばいいと思います。
ペルソナというのは一種の演技ですが、それによって人を励ましたり勇気づけたり動かしたりはできます。むしろたいして面白みのないプライベートのペルソナよりも、ずっと周囲の人にとっては望ましいものになるでしょう。
ペルソナの作成は、自分を変革する良いチャンスです。シャイだったり、ひっこみ思案だったり、自分自身のペルソナのせいでどうしても仕事がうまくいかないという人は、仕事をするうえでどのような自分でありたいかを考えて、仕事では常にそのペルソナをかぶってみてはいかがでしょう。
ペルソナは演技ですから、失敗しても素の自分は傷つきませんし、なによりもペルソナをかぶって演技するのは、いつも同じ自分自身でいるよりも、ずっと楽しいはずです。
宮井 弘之
株式会社SEEDATA 代表取締役社長
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