●米国ではワクチンの接種が進むにつれて株価は堅調に推移、相対的にバリュー優位の動きが顕著。
●日本ではワクチン接種のペースが米国より遅く、株価は軟調、ただバリュー優位の動きは米国と同じ。
●日本株は接種の進展で上昇余地あり、ただ接種率の逓減傾向が株価の感応度を弱める場合も。
米国ではワクチンの接種が進むにつれて株価は堅調に推移、相対的にバリュー優位の動きが顕著
今回のレポートでは、ワクチン接種の進捗率と株価の関係について、日米のケースを比較検証します。英オックスフォード大学が運営するOur World in Data(データで見る私たちの世界)によると、米国では、少なくとも1回の接種を受けた人の総人口に占める割合は、2021年6月10日時点で、52.1%となっています。データは2020年12月20日からの公表となっていますので、約半年で5割強に達したことになります。
次に、米主要株価指数について、データが公表された前営業日(2020年12月18日)を基準に、2021年6月10日までの上昇率を確認すると、ダウ工業株30種平均は14.2%、S&P500種株価指数は14.3%、ナスダック総合株価指数は9.9%と、堅調な動きが確認されます。また、S&P500バリュー指数の上昇率は18.1%、S&P500グロース指数は10.9%と、相対的にバリューが選好される状況となっています。
日本ではワクチン接種のペースが米国より遅く、株価は軟調、ただバリュー優位の動きは米国と同じ
一方、日本についても同様に、少なくとも1回の接種を受けた人の総人口に占める割合をみると、2021年6月10日時点で、12.6%となっています。データは同年2月17日からの公表となっていますので、約4ヵ月で12%台に乗せたことになります。なお、米国の場合、約2ヵ月で12%台に達していますので、日本のワクチン接種ペースは、今のところ米国の半分程度ということになります。
次に、日本の主要株価指数について、データが公表された前営業日(2021年2月16日)を基準に、2021年6月10日までの動きを確認すると、日経平均株価は5.0%下落、東証株価指数(TOPIX)は0.4%下落と、軟調な展開となっています。また、TOPIXバリュー指数は3.9%上昇、TOPIXグロース指数は4.6%下落と、日本でも相対的にバリューが選好される状況となっています。
日本株は接種の進展で上昇余地あり、ただ接種率の逓減傾向が株価の感応度を弱める場合も
では、ここで、日本でワクチンの接種が普及しつつあるにもかかわらず、株価の反応が総じて鈍い理由について考えてみます。まず1つに、前述の通り、日本のワクチン接種の進展は、かなりゆっくりしていることが挙げられます。改めて米国とのペースを比べてみると、その差は顕著で(図表1)、国内の経済が正常化に向かうという期待が、早期に形成されにくくなっている恐れがあります。
もう1つは、接種率に逓減傾向がみられることです。これはワクチンを接種しない人々も、一定程度存在するためと考えられ、イスラエルや英国で、その傾向がうかがえます(図表2)。
これらを踏まえると、日本については、ワクチン接種がこの先一段と進むことにより、株価の上昇は期待できるものの、接種率の逓減傾向が強く意識されると、日本のみならず他の国でも、株価の接種率に対する感応度は、幾分弱まることも考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ワクチン接種と株価~日米での比較検証』を参照)。
(2021年6月14日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト