「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

延滞と滞納は税務署からは全く違う意味がある

まとめると、延納と滞納をくらべると、追加される税金の割合は年1%違うということになります。これだけを見ると、あまり大きな違いは感じられないのではないでしょうか。

 

ところが、延納と滞納の違いは、税負担の差だけの問題ではありません。まず、税務署からの見え方として、延納は「納税する意志」が見えるのに対し、滞納はいうなれば「納税を無視している状態」です。

 

納期までに税金が納められておらず、延納の届け出もなければ、税務署は納税者に対して督促をおこないます。それでもなお納税がなければ、より重たい滞納処分に動きます。たとえば自宅の財産調査がおこなわれたり、財産を差し押さえられたりといった処分がなされる可能性が出てくるのです。

 

一般的に差し押さえの対象になるのは、不動産や預貯金ですが、場合によっては毎月の給料や売上金を差し押さえられる可能性もあります。そうすると、会社や取引先に迷惑がかかってしまうかもしれません。

 

財産が差し押さえられると、その後、競売という処分に移ります。つまり強制的に売却されるということで、このお金は未納税額に充てられます。

 

もし「差し押さえられる財産なんてないから平気」と考えている人がいたら、それは甘い考えです。税金の納税義務は子孫に相続されますし、贈与税の場合、贈与を受けた人が税金を払わなければ、贈与をした側の人に納税義務が課されるルールになっているので、身内に迷惑がかかってしまいます。

 

このように、滞納処分はひじょうに重たいものですから、できるだけ税務署から督促を受けるような状態にしないことが大切です。そのためにも、売上の一部を納税資金として確保しておく習慣をつけておきましょう。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年5月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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