自分を客観視し、自らの仕事をマネジメントする力
在宅勤務になると自分ひとりで仕事をマネジメントすることになる。いわば、仕事をしている自分を管理者である自分が見守る状態と言える。
ゆとりを持たせたスケジュールを組ませたり、ウォーキングや仮眠で体調を整えるようコントロールするのは仕事をする自分ではなく、「管理者の自分」だ。
新型コロナ危機以前から管理職だった人たちはリモートなり面着なりで部下の仕事を管理する。これは難しいことではない。以前の仕事の延長線上にあるものだから。
一方、一般のビジネスパーソンは「管理者の自分」を養成しなければならない。そうして、「部下の自分」を管理する。
自分を働かせすぎると、自分が壊れてしまう。
「この辺にしておけ」と肩を叩いて、やめさせるのはオフィスにいるマネジャーではなく、自分自身だ。
在宅勤務を始めて、もっとも慣れないのは、自分が「管理者、部下というふたつの役割を持つこと」だろう。
だが、心配することはない。
人間は慣れるという習性を持っている。2週間もすればふたつの役割を演じ分けている自分に気が付く。
ふたつの役割を自覚するようになるとは、自分を客観視できるようになることだ。
そうしたら、今度は在宅勤務で感じている不安を客観視してみる。
たとえば孤独感だ。客観視して自分のなかに孤独感を見つけたら、自分ひとりで抱え込まずに、すぐに上司(本当の管理者)に相談する。ふたりで解決に向けてプランを出す。そうやって、前向きな相談と解決を繰り返せば、不安は解消できる。
疎外感を感じている部下とコミュニケーションをとる
在宅勤務で上司がやることはどこの組織でも同じだ。仕事の指導もさることながら、部下の心のなかから不安、孤独感、疎外感を取り払ってあげることだろう。
「あなたはひとりで仕事をしているのではない」
それを伝える。
不安と疎外感を感じている部下に対しては、つねにコミュニケーションを取る。リモートで声をかけるだけでは足りない。
不安と疎外感の原因は直接、上司や同僚と会っていないことなのだから、上司は部下と外で会うといい。リモートだけではなく、時には感染症対策をした喫茶店やカフェで打ち合わせをする。リアルなコミュニケーションを取ることは在宅勤務の刺激にもなる。
ストレスをなくすのはいいことだけれど、時々は刺激が必要だ。まったくストレスがなくなった状態とは引退した生活みたいなもので、小さな刺激を与えなくてはならない。単調に陥りがちな在宅勤務ではちょっとした刺激が脳と身体を活性化させるのである。
野地秩嘉
ノンフィクション作家