夫が亡くなった後で届け出ると、夫の両親(姑や舅)との親族関係を終わらせることができる「姻族関係終了届」。テレビや新聞などでは「死後離婚」と呼ばれることもあります。価値観の違いや家庭内の暴行・虐待などから、離婚する夫婦は3組に1組の割合にのぼります。さらに、生前は何とか夫婦関係を保っても、夫が亡くなってから「姻族関係終了届」で夫の両親との親族関係を終わらせる人が増えています。今回は「姻族関係終了届」に焦点をあてていきます。

「姻族関係終了届」とは?

やっとこの時がきた…(※画像はイメージです/PIXTA)
やっとこの時がきた…(※画像はイメージです/PIXTA)

「姻族関係終了届」とは、亡くなった配偶者の血族との親族関係を終わらせることができる書類です。

 

夫婦のどちらか一方が亡くなったとき、亡くなった人と残された配偶者の婚姻関係は終了します。しかし、亡くなった人の血族と残された配偶者の親族関係は続いたままになります。

 

妻には夫の両親の財産を相続する権利はなく、同居していなければ夫の両親を扶養する義務もありません。しかし、高齢者を中心に「嫁は両親の世話をするべきである」という考えが根強く、夫が亡くなった後でも妻が夫の両親の世話をさせられるのが実情です。

 

このほか、夫の両親や兄弟姉妹がお金を無心したり、生活に過剰に干渉したりといったことから、夫の実家との関係が悪化しているケースもあります。自分が死んだときには夫の家のお墓に入りたくないという声も多く聞かれます。

 

そこで「姻族関係終了届」が注目されています。姻族関係終了届を提出すれば、夫の両親や兄弟姉妹との親族関係は終了します。届け出は市区町村役場に用紙を提出するだけでよく、夫の親族の同意は必要ありません。

 

 

「姻族関係終了届」のメリット

姻族関係終了届を提出する一番のメリットは、自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる点です。一方で、子供と夫の両親との血縁関係はそのまま保たれます。相続権や遺族年金への影響はなく、経済的な心配もありません。

 

【「姻族関係終了届」のメリット】

・自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる

・子供と夫の両親との血縁関係は保たれる

・亡くなった夫の遺産は相続できる

・遺族年金ももらえる

 

■自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる

姻族関係終了届の提出には夫の親族の同意や家庭裁判所の許可などは必要なく、自分の意思だけで手続きすることができます。

 

提出したことが親族に通知されることもありません。戸籍には「姻族関係終了」と記載されますが、親族が戸籍を見ない限りばれることはありません。

 

■子供と夫の両親との血縁関係は保たれる

妻が夫の親族との関係を断ち切っても、子供と夫の両親との血縁関係はそのまま保たれます。子供にとって姑は「おばあちゃん」であり舅は「おじいちゃん」であることに変わりはありません。

 

夫の両親が亡くなったときは、子供は代襲相続で遺産を相続することができます。

 

子供と夫の両親の縁が切れないことについては、デメリットとしてとらえる人がいるかもしれません。しかし、遺産相続ができることは知っておくとよいでしょう。

 

 

■亡くなった夫の遺産は相続できる

姻族関係終了届を提出しても相続権には影響がなく、夫の遺産は相続することができます。

 

夫の生前に離婚した場合は相続権がないことから、姻族関係終了届を提出する妻だけでなく夫の親族も誤解していることが多いです。夫の親族から遺産を相続しないように言われたり、相続した財産を返すよう迫られたりするかもしれませんが、従わなくても大丈夫です。

 

■遺族年金ももらえる

姻族関係終了届を提出しても、その他の要件を満たしていれば遺族年金をもらうことができます。すでにもらっている場合も、引き続きそれまでどおりもらうことができます。

 

ただし、再婚するなど支給の要件を満たさなくなった場合は遺族年金の支給が停止されます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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