保育所経営で重要なのは「保育士を大切にする」こと
一般的なビジネスであれば、経営者が顧客対応やサービスについてアレコレと考えなければいけませんが、認可保育所では、それほど必要な業務ではありません。
「認可」である以上は、サービス基準は経営者が決めることではなく、自治体が決めることです。そして、子どもや保護者の対応は、国家資格の所有者である保育士に任せれば問題ありません。
経営者は「保育園運営で成功したいなら保育士を大切に」ということを主眼におけばよいのです。
筆者は保育士に現場における心構えとして、「ラーメン屋で、ラーメンを注文したらラーメンが運ばれてきただけで感動しますか?」と伝えます。ラーメン屋なのに、ラーメンが出てこない。普通のお店ならありえないでしょう。保育園もそれと同じです。子どもを大切にしない保育園などないと思います。
ラーメン屋だったらラーメンが不味ければ繁盛しません。そのときに店主が「私は一生懸命作っているんだ!」「私にとっては絶品ラーメンなんですけど!」と訴えても、「だからなに?」と思うだけです。
「子どものために一生懸命に働いています」という保育士はそれと同じです。保育士の主観で子どものためにどれだけ働こうが、それが保護者に伝わっていなければ、前述のラーメン屋の店主のような存在になってしまいます。
私たちが、会社としては「保育士を大切にします」、保育園としては「保護者を大切にします」を全面に打ち出しているのは、常にこの評価基準を基に、客観性をもって子どもたちのために働いていこうという意思表示でもあるのです。
「子どもたちを大切にします」は、当たり前過ぎて口にするのも恥ずかしいとさえ思っています。
クレーム防止には「連絡帳の充実・画像の提供」が有効
ただ、保育園の業務として、クレームを防ぐのに有効な施策を紹介します。それは連絡帳の充実と画像の提供です。
いま、連絡帳はデジタル化が進んでいます。私たちの保育園でも「ハグノート」というアプリを利用していますが、連絡帳としては活用しておらず、園からのお知らせを配信するのに使っています。
私も当初は、デジタル連絡帳を使用するように準備していましたが、現場の保育士から従来の手帳型の要望が高く、結局、連絡帳はアナログ形式で落ち着きました。
小規模保育園で12名定員の場合、私たちの保育園では管理者を含め6人が午後まで担当しています。つまり、多くても3人程度の連絡帳しか書かないのです。
そのため、1日の記入量も内容もとても充実しています。我が家も長女、次女が筆者の保育園にお世話になっていますが、本当に「よく見てるなぁ」と感心します。
なによりも、スマートフォンで送られてくる文字よりも手書き文字のほうが親近感や信頼感を抱いてもらえます。
画像も大きなポイントです。実は、ここに既存の保育園の古い体質を見ることができるのです。昔は、カメラでの撮影はそれほど気軽なものではありませんでした。そのため、行事で撮影した写真が欲しい場合は焼き増しをしなければいけないので実費を請求することは普通のことでした。
しかし、いまや誰でも手軽にスマートフォンで撮影している時代です。下手をすれば街角の写真館の店主よりも子育て世代のママさん保育士の方が子どもを可愛く撮ってくれます。
私たちの保育園は、保育室にタブレット端末が設置してあり、イベントだけではなく、普段の子どもたちの様子も積極的に撮影しています。
グーグルのドライブ機能を用いて保護者とそれらの画像のデータを共有し、「ご自由にダウンロードしてください」としています。
連絡帳から滲み出る保育士の愛情溢れる文章、笑顔で楽しそうにしている我が子の画像を見続けて文句を言ってくる保護者はほとんどいません。
2020年12月に私たちの保育園の一つで、看護師の1人がご主人経由で新型コロナウイルス感染症に罹患し、職員だけではなく園児もPCR検査を受け、2週間、臨時休園となりましたが、保護者からのクレームはいっさいありませんでした。
それは、普段から保護者の信頼を勝ち得た現場の職員たちの日々の誠意ある対応に起因すると筆者は考えています。
保育園に大切なのは充実したマニュアルではありません。そこで働く保育士の職業倫理と愛情なのです。くどいようですが、最後にもう一度お伝えしたいことは、「保育園運営で成功するには保育士を大切にしてほしい」ということです。
河村 憲良
株式会社Five Boxes 代表取締役
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