相続税の課税対象の10件に1件は税務調査が入る
相続税が発生する相続が起きた場合、税務署による税務調査(実地調査)が入る場合があります。国税庁の発表によると、平成30事務年度(2018年7月~2019年6月)の相続税の課税対象件数約10万6000件のうち、税務調査は1万2463件でした。10件のうち1件は税務調査が入った計算になります。
そしてこのうち1万684件、85.7%というかなり高い割合で申告漏れなどの問題が見つかりました。それにより追加で納付を求めた金額、追徴課税の合計は708億円にもなり、実施調査1件当たり568万円だったということです。
どういった家庭が調査対象となるのかは定かではなく、金融資産や不動産などの個人の財産状況のデータベースや、税務調査官の経験に基づき選ばれているようです。
相続が発生すると、「相続についてのお尋ね」という封書が送られてくることがあります。これは、自身で申告が必要かどうかをチェックするための書類なのですが、相続が発生したすべての家庭に送られてくるのではなく、相続税が発生しそうな家庭のみに送られてきます。
それはつまり、税務署が相続の発生や相続財産の内容を、ある程度把握しているからに違いありません。では、なぜ税務署はそんなことがわかるのでしょうか。
まず、家族や親族から市区町村に死亡届が提出されると、その情報が税務署に伝達されます。さらに税務署は、亡くなった人の財産を調べ、相続税の課税対象となりそうか否かを判断します。例えば、所得税の確定申告を情報源として、税金を多く納めていたなら、多くの財産を持つと予想されるのです。
このような流れで税務署は相続について把握するわけですが、それなら、税務署から「相続についてのお尋ね」が届かなければ、相続税を申告しなくても見つからないのかというと、そうではありません。
例えば、相続により不動産の名義を変更する登記をすると、その情報を登記申請した法務局から税務署が把握できるようになっているなど、税務署は様々な税金に関する多くの個人情報を持っています。申告漏れはほとんどのケースで露見すると考えておくべきです。
平野克典
司法書士平野克典事務所 所長・司法書士
金子嘉徳
株式会社フロンティアグループ 代表取締役
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