コロナ禍で崖っぷちに追い込まれたのは…
「コロナ禍で会社員の給与が大幅減!」とセンセーショナルに報じられることもありますが、冒頭にあるように、前年比プラスを記録した業種も少なからずありますから、たまに見ることのある「コロナ禍の影響は限定的」という主張は、正解ともいえるでしょう。
現金給与額の毎月の推移を見ていくと、新型コロナウイルスについての報道が多くなった2020年1~3月は、業種全体で前年比プラスで推移。第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に前年比マイナスを記録すると、2021年2月まで11ヵ月連続で給与減。2021年3月には前年比プラスに転じました。
しかしパートタイムを除く一般労働者に限ると、コロナ禍の2020年~2021年、現金給与総額で前年比マイナスを記録したのは、2020年7月(前年比-0.5%)、2021年1月(前年比-1.7%)、2021年2月(前年比-0.5%)だけでした。つまり、賃金がマイナスとなっているのはパートタイムの人たちが主で、一般の人たちにまでは影響が及んでいるとまではいえない状況です。
連日、新型コロナウイルスの感染者数や、困窮する人たちについて報道はされていますが、そこには、どこか他人事の雰囲気も。まずは「労働弱者」ともいえる人たちが崖っぷちに立たされ、その他の人たちは安全地帯にいる……コロナ禍では労働格差がますます広がったといえるかもしれません。
アフターコロナの「自己防衛」
コロナ禍の賃金の推移から、改めて「労働弱者」と呼ばれている人たちの立場が浮き彫りになりました。
総務省『労働力調査』によると、2021年1~3月期、役員を除く雇用者5601万人のうち、正規の職員・従業員は3456万人。38万人増で、6期連続のプラスを記録しました。一方で非正規職員・従業員は2055万人。98万人の減少で、5期連続の減少を記録しています。
非正規雇用を選ぶ理由として、男女ともに多いのが「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く、男性は178万人、女性は455万人に達します。積極的に「非正規」を選択しています。一方で「正規の職員・従業員の仕事がないから」と、仕方なく「非正規雇用」を選択する人たちもまた、男性111万人、女性108万人もいます。
何かと手厚い保護が受けられる日本ですが、いつまでも、そんな保護制度があるとは限りません。必ずしも思い通りになるわけではありませんが、「労働弱者からの脱却」がアフターコロナを生き抜くためのテーマといえそうです。