税務調査でしばしば取り上げられる「名義財産」の問題。相続手続きの際、被相続人・相続人間の認識の齟齬からトラブルに発展するケースは少なくない。相続問題に精通する税理士が、名義預金の基礎知識から万一の際の対応策まで解説する。※本記事は、『相続税調査であわてない 「名義」財産の税務』(安部和彦税理士著、中央経済社)より抜粋・再編集したものである。

名義財産は、容易に「真の保有者」を判断できない

名義財産とは、一般に、預貯金や株式、不動産といった財産に関し、名義人と真実の所有者とが異なる場合のその財産を言う。預貯金や株式、不動産といった重要かつ価値がある財産の場合、その所有者がだれであるのか問題となるケースが多いため、外部の者からでもそれが判断できるよう、あたかも(小学生の)持ち物に名前を記入するかのように、所有者の名義が付されることとなる。

 

通常の財産の場合、名義人と真の所有者とは一致するため、何ら問題は起こらない。問題が起こるのは、何らかの理由で名義人と真の所有者とが一致しない「名義財産」のケースである。

 

わが国においては、「名義貸し」により、実際の取引主体とは異なる名義上の取引主体が経済取引を行うことが少なくなく、これが名義財産の問題を引き起こすのである。

 

学生などが民法を勉強するとき、割と初期の段階で、不動産の登記名義と真実の所有者とが異なるケースについて学ぶこととなるが、これなどは名義財産の典型である。不動産は価値も高く重要な財産であるため、その所有権の移動(物権変動)が対外的に認識できないと、取引の安全性が確保できないこととなる。そのため、登記(不動産登記制度)という公示手段を対抗要件として、取引の安全を確保する仕組みが導入されているわけである。

 

名義財産がもたらす困難ないしトラブルを一言でいえば、真の保有者が誰であるか、外部からは(財産の名義人が自分の名義とされていることすら知らないケースも珍しくない)容易には判断がつかないという点である。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
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