●国内企業の決算発表がほぼ終了、20年度本決算では、改めて非製造業の回復の遅れを確認。
●21年度業績予想では製造業、非製造業とも増収増益を予想、業績回復傾向が続くとの見通し。
●ただ業績予想は市場の期待ほどではなく、金融相場から業績相場への移行はまだ時間を要しよう。
国内企業の決算発表がほぼ終了、20年度本決算では、改めて非製造業の回復の遅れを確認
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、5月19日時点までに決算発表を終えた企業は1,300社を超えました。決算発表の進捗率は、企業数ベースで98%台に達しており、決算発表はほぼ終了したといえます。そこで、今回のレポートでは、集計データに基づき、2020年度の本決算を総括し、2021年度の業績予想の傾向を確認します。
はじめに、2020年度の本決算の実績を確認すると、前年度比で売上高は7.6%減、営業利益は14.1%減、経常利益は6.3%減、純利益は2.6%減という結果になりました(図表1)。製造業・非製造業の区分でみると、売上高と営業利益はともに減益でしたが、経常利益と純利益は、製造業がいずれも2ケタの増益となった一方、非製造業はいずれも2ケタの減益となり、改めて非製造業の業績回復の遅れが確認されました。
21年度業績予想では製造業、非製造業とも増収増益を予想、業績回復傾向が続くとの見通し
次に、2021年度の業績予想に目を向けます。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は6.5%増、営業利益は27.1%増、経常利益は19.5%増、純利益は27.4%増という結果になりました(図表2)。つまり、2021年度は全体として業績の回復傾向が続き、増収増益で着地するという見通しが示されました。
さらに、業績予想を製造業・非製造業の区分でみると、製造業は、前年度比の売上高が8.7%増、営業利益は25.9%増、経常利益は17.0%増、純利益は16.1%増という数字になりました。これに対し、非製造業は、売上高が2.8%増、営業利益は29.2%増、経常利益は23.9%増、純利益は47.7%増でした。つまり、利益の伸びは製造業よりも大きいという予想になっています。
ただ業績予想は市場の期待ほどではなく、金融相場から業績相場への移行はまだ時間を要しよう
このように、製造業、非製造業とも、増収増益予想が確認されたことは、株価にとってポジティブな材料と考えます。しかしながら、売上高、営業利益、経常利益、純利益の予想値は、ほとんどが市場予想を下回りました。例えば、純利益について、市場予想は、製造業が前年度比で30.2%増、非製造業が53.0%増、全体で38.4%増でした。
つまり、2021年度の業績予想は、業績の回復傾向が確認できる良好な内容ではあったものの、市場が期待したほどではなかった、ということになります。この点は、2021年5月12日付レポート『国内決算発表の途中経過と株価の反応』でも触れていますが、決算一巡後も状況は変わりませんでした。そのため、金融相場から業績相場への移行は、今しばらく時間を要するものと思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年度本決算の総括と2021年度業績予想の傾向』を参照)。
(2021年5月21日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト