ドル円相場と日米金融政策の展望

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●新年度入り後のドル円は、方向感に乏しい動きが続き、米インフレ懸念に対しても反応は限定的。

●ドル円は米国の物価変動を一時的と捉え、その先のテーパリングに関する手掛かり待ちとみられる。

●FRBによるテーパリングの織り込みが奏功し、米長期金利は上昇へ、ドル円は年末112円程度か

新年度入り後のドル円は、方向感に乏しい動きが続き、米インフレ懸念に対しても反応は限定的

ドル円は、4月の新年度入り直後、1ドル=110円台後半で推移していましたが、徐々にドル安・円高が進行し、4月23日には一時107円40銭台をつけました。その後はいったんドル高・円安方向に転じたものの、5月は109円台後半で押し戻される場面が目立ち、110円台の回復には至っていません。このように、新年度入り後のドル円は方向感に乏しく、直近までの値幅は3円30銭程度です(図表1)。

 

(注)データは2021年4月1日から5月24日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル円相場の推移 (注)データは2021年4月1日から5月24日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

5月第2週は、4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を大幅に上回ったことから、米国のインフレ加速に対する警戒が強まり、各国の主要株価指数は大きく下落しました。しかしながら、米長期金利については、期待インフレ率にいくらか上昇の動きがみられたものの、それが10年国債利回りを大幅に押し上げることもなく(図表2)、また、ドル円でのドル高の動きも限定的だったため、株式市場はやや過剰反応という印象を受けます。

 

(注)データは2021年4月1日から5月24日。米期待インフレ率は期間10年のブレーク・イーブン・インフレ率(物価連動債の取引参加者が予測する今後10年間の年平均物価上昇率)。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米10年国債利回りと米期待インフレ率 (注)データは2021年4月1日から5月24日。米期待インフレ率は期間10年のブレーク・イーブン・インフレ率(物価連動債の取引参加者が予測する今後10年間の年平均物価上昇率)。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

ドル円は米国の物価変動を一時的と捉え、その先のテーパリングに関する手掛かり待ちとみられる

米国の物価動向については、今後の経済指標を見極める必要がありますが、4月のCPIの大幅な伸びは、いわゆる「ベース効果」や、経済活動の再開に伴う一時的な「供給制約」によるところが大きいと推測されます。いずれも特殊要因であることから、年前半でピークアウトする可能性が高く、弊社は、米連邦準備制度理事会(FRB)と同様、足元の米国の物価上昇は、一時的な現象とみています。

 

米10年国債利回りや、ドル円の比較的落ち着いた動きを踏まえると、債券市場も為替市場も、やはり米国の物価変動は一時的と捉えているように思われ、むしろその先の量的緩和の縮小(テーパリング)に関する手掛かり待ちと見受けられます。なお、テーパリングについて、弊社では、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)か、8月のジャクソンホール会議で議論の開始が宣言され、来年の年初には実施されると考えています。

FRBによるテーパリングの織り込みが奏功し、米長期金利は上昇へ、ドル円は年末112円程度か

弊社の予想通り、米インフレ懸念が一過性のものにとどまり、夏頃にFRBがテーパリングの議論を開始するという流れが確認されれば、米10年国債利回りは次第に上昇傾向を強める可能性が高まります。FRBは、市場との対話を通じ、慎重にテーパリング開始を織り込ませると思われ、米10年国債利回りは、急騰することなく水準を切り上げ、年末時点には2%水準に達するとみています。

 

一方、日本について、日銀は金融政策を年内据え置く公算が大きいと考えます。10年国債利回りは、イールドカーブ・コントロールが継続されることで、米長期金利上昇につれた動きが抑制され、年末は現状とほぼ変わらず、0.1%水準を見込んでいます。ドル円は、このような日米金融政策と長期金利の動きを受け、ドル高・円安が進み、年末時点で112円程度を予想しています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドル円相場と日米金融政策の展望』を参照)。

 

(2021年5月25日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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