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相続税の申告手続きは、複雑そうなイメージからか、不安を覚える人が多いようですが、基本的な流れに沿って準備・作業を進めれば大きな混乱はきたしません。ただし、相続財産の定義については、相続人の認識が甘いと課税当局からの指摘を受けるため、十分な注意が必要です。※本記事は、『中小企業&資産家のための税目別誤りやすい税務への対応Q&A』(株式会社ぎょうせい)より抜粋・再編集したものです。

税務調査で狙い撃ちに…「名義預金」に要注意

【1. 相続人名義の預金の取扱い】

 

相続税の調査において、課税当局が多く指摘するのは、相続人など家族名義の預金が相続財産に該当するかどうかです。

 

国税庁は、誤りやすい事例として、「名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。したがって、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の財産と認められる預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族の名義や無記名のものなどの被相続人名義以外のものも、相続税の申告に含める必要があります。」としています。

 

申告に当たっては、家族名義の財産の帰属についても十分検討する必要がありますので、ご注意ください。

 

【2. 民法改正について】

 

平成30年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立しました。民法のうち相続法については、昭和55年に改正されて以来大きな見直しは行われず、一方この間、我が国における平均寿命は延び、社会の高齢化が進展するなど社会経済の変化が生じていることから、今回の改正は、このような変化に対応するために、相続法に関するルールを大きく見直した、と説明されています。

 

具体的には、

 

(1)被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から、

 

① 配偶者居住権の創設
② 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

 

(2)遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点から、

 

① 自筆証書遺言の方式緩和
② 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

 

(3)その他、預貯金の払戻し制度の創設、遺留分制度の見直し、特別の寄与料の創設など

 

ですが、相続税の計算は民法のルールを基礎としていますので、これらの改正のうち、配偶者居住権の創設、遺留分制度の見直し、特別の寄与料の創設については、相続税の計算に影響があります。

 

 

与良 秀雄

iTAX税理士法人 顧問

千葉商科大学(会計ファイナンス研究科) 客員教授

 

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中小企業&資産家のための税目別 誤りやすい税務への対応Q&A

中小企業&資産家のための税目別 誤りやすい税務への対応Q&A

伏見 俊行(編著)

株式会社ぎょうせい

中小企業や資産家の円滑な税務対応のために、重要な税情報と、納税者が自発的に適正な税務対応を行うために役立つ情報を提供。特に重要な事項、誤りやすい事項、質問の多い事項をQ&A形式で平易に解説する。

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