開き戸の近くには「使えない面積」ができてしまう
マンションのドアには開き戸が採用されることが多いようです。というと至極当たり前のように思うでしょうが、なぜ開き戸なのか、と考えたことはあるでしょうか?
マンションを選ぶ際には、ドアの使い勝手にも注目してほしいのです。
前回は、通風のためにボトルネックとなる框扉を常時開けておく必要があると説明しましたが、開けていたはずのリビングの框扉が風にあおられ突然バタンッと大きな音を立てて閉まり、框扉のガラスが割れたとか、びっくりして昼寝から目覚めたというのはよく聞く話です。
これは田の字型の間取りに関係するのですが、リビングや和室の窓から入る風が玄関側の窓に抜けるために風のルートが一カ所に集中し、框扉付近で風が加速するために起こるのです。
それ以外にも開き戸には不愉快な点がいくつかあります。たとえば、開き戸では、戸を開閉するためのスペースを空けておく必要があります。つまり、開き戸の近くには家具は置けず、使えない面積ができてしまうことを認識しておく必要があるのです。
一坪いくらと表現されがちなマンションの貴重な床面積を有効に使う間取りになっているか、モデルルームや図面などを見る時は、必ず確認してください。
「狭い面積」に住むことの多い日本に開き戸は向かない
子ども部屋にはベッドと勉強机、本棚を設置したら、本棚の幅が思ったより広く、子ども部屋に入る開き戸が、全開できなくなった。収納部の開き戸がベッドに当たり、半分しか開かず、衣類の出し入れに不自由したなど、入居してから気付く扉の開き勝手による不満はよく聞く話です。
また、室内だけでなく、廊下側から考えても開き戸はドアノブが邪魔に感じます。
扉を開いて固定した時に扉自体の厚みやさらに出っ張るドアノブにより、廊下は10㎝程度狭くなるものですが、買い物帰りにスーパーのレジ袋をドアノブに引っ掛け、袋が破けて中身が散乱し卵が割れたとか、子どもを抱いて移動した時に不注意でぶつけてしまい泣かれたとか、そんな話もよく聞きます。
忙しいお母さんが思わず開けたドアに、視野に入らない我が子がぶつかったという話もあります。配慮のないマンションでは、トイレの扉と框扉を同時に開けたらぶつかるという設計も見かけたりします。
こうしたいくつもの不愉快な点を考えると、どこもかしこも開き戸というマンションの作られ方には疑問を感じます。特に日本では古くから限られた面積を生かし、通風を自在に操ってきた引き戸という知恵がありました。
マンションでは、開き戸が当たり前なので疑問に思う方は少ないでしょうが、改めてその住みづらさを考えてみてください。