少子高齢化が進むなか、医療業界では「生き残り」をかけて患者の奪い合い競争が激化しています。患者に求められ、選ばれるクリニックになるにはどうすればよいのでしょうか。自らもクリニックを経営する筆者は「スタッフの育成」が重要であると語ります。医師さえ失職しかねないAI時代だからこそ、人間しかできない仕事について考えてみましょう。※本連載は、梅岡比俊氏の著書『クリニック人財育成18メソッド』(医学通信社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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AI時代、医療スタッフに求められる2つの「力」

これからやってくるAI時代、私は、人間には”共感する力”と”考える力”、この2つが求められると考えています。なぜなら、その2つはAIには取って代われないからです。

 

共感する力とは、人の心の機微を感じ、相手の身になって物事を見る力で、医療スタッフには不可欠な能力だと思います。クリニックに勤めようと思う人は、もともと人間が好きで、世話が好きだと思うので、他者に比べて共感する力が強い傾向があるのではないでしょうか。一方で、主体的に考える力は弱いように感じます。弱いというより、主体的に考える習慣がないというか、これまで主体的に考えることを求められていなかったのだと思います。

「切磋琢磨できる環境」で共感力アップ

少子化の進む日本では、すでにクリニックも競争の時代に入っています。患者さんから求められ、選ばれるクリニックになるためには、まずスタッフには、元来得意な共感する力を磨いてもらう必要があるのではないでしょうか。この力は、共感する力を発揮して働いている先輩の傍で一緒に働き、吸収し、お互いに切磋琢磨することで、自然に磨かれていくものだと思います。

 

例えば、幕末において吉田松陰が開いた松下村塾は、開校期間はたった1年半か2年かそこらでしたが、高杉晋作や久坂玄瑞など幕末に活躍した優秀な人材を何十人も輩出し、日本をリードしました。優秀な人材が、偶然そこに集まったのではなく、松下村塾という組織のなかでお互いに磨き合える存在になった瞬間に、何かしらの相互作用が起きて爆発的な力が生まれ、能力がそれぞれ身に付いたのだと思うのです。もともと人間は誰でも可能性をもっていて、優秀な人と平凡な人の差は、その可能性が磨かれたか磨かれなかったかの違いだと思います。

 

多くの場合は磨かれません。でも、周りに吉田松陰のような師匠、あるいは志ある先輩・同輩が集まったとき、お互いに共感し合い、優秀な人材集団になるのだと思います。

 

クリニックにおいても、新入スタッフは、患者さんの心に共感し寄り添っている先輩の姿を目の当たりにしたときに、意識に変化が生じ、もっと社会の役に立ちたいという気持ちをもてるようになるのだと思います。

 

開業したてのクリニックでスタッフが少ない場合は、例えば、「開業医コミュニティ(MAF)」のなかで、スタッフ同士のコミュニティをつくって複数のクリニックのスタッフが切磋琢磨し合うこともできます。お互いのクリニックの課題をシェアして様々な意見を出し合うことによって、共感力を身に付けることができるのです。

 

また、共感というキーワードを考えたとき、他業種から学ぶこともたくさんあると思います。皆さんが普段受けている接客サービスで、良かったと思うサービスを、自院でも取り入れられないかな、と考えるだけでいいのです。逆に、されて嫌だったことは何か、を考えるのも良いでしょう。

 

例えば、人は本来、人として認識されたいと思っているので、無視されることに最も怒りを覚えます。もし、どこかでそういう嫌な体験をしたら、自分のクリニックでは、患者さんにそうした思いをさせない方法を考えてみてはいかがでしょう。患者さんために心遣いできるサービスを提供できるよう、スタッフがお互いに切磋琢磨できるような環境をつくればいいのです。

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クリニック人財育成18メソッド

クリニック人財育成18メソッド

梅岡 比俊

医学通信社

女性スタッフのマネジメントに失敗し、人材不足に陥っている…。医療現場でのお悩みを解決した書籍! 成功しているクリニックの最大の秘訣は「優秀なスタッフの育成」にあり! スタッフの能力と積極性を育て、活気に満ちた…

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