老後のお金に不安があるなら…まず行うべき計算とは
●ケース1 「必要な老後資金を早めに試算しておけばよかった!」
J子さんは55歳。シングルで結婚歴はありません。両親はすでになく、いまは親が住んでいた家で一人暮らしをしています。大学卒業後に就職した地方銀行が他行と合併したときリストラの対象となり、以後は地元の中小企業で事務の仕事をしてきました。
そんなJ子さんの不安は、老後資金が足りるかどうかということです。一所懸命節約して貯めた預貯金は1500万円程度です。2020年に100年に一度ともいわれる新型コロナウイルス蔓延による業績悪化の影響もあり、給与もボーナスもカットになりました。今後も業績が上向く見通しがなく、場合によってはリストラということもあり得るかもしれません。会社に退職金制度がないため、退職一時金を受け取ることもできません。
家族もおらず、安心して老後を送れるほどの貯蓄もない自分の将来はもっと暗くて悲しいものになるだろうと悲観的に考えてしまい、「もう少し若い頃に必要な老後資金を試算して対策を打っておけばよかった」と後悔しています。
老後にかかるお金については、「年金では生活できない」「年金以外に2000万円が必要」など、心をざわつかせ不安にさせることばかりが聞こえてきます。
とはいっても、実際にいまの自分の生活と照らし合わせてみて、年金予想額での毎月の不足額や、さらには不測の事態のための予備費を加えた、長いスパンで見た場合の不足額を「具体的に計算している方」はほとんどいません。ニュースで「足りない」と言っていたから、周りの年金生活者たちが「大変だ」と言っているから、自分も大変になるだろうと思い込んでいる場合がほとんどです。
ちなみにこの例のJ子さんは、老後の収支を計算してみたところ、お金を節約しながら生活する習慣が身についているので、月3万円貯金を切り崩せば生活できることが分かりました。
ではその計算法をご紹介しましょう。
65歳で退職し、87歳まで生存するとして必要な資金(年金以外)は
《36万円(年額)× 22年=792万円》
となります。
現在55歳のJ子さんの貯蓄額は1500万円。これから10年間働き、少なく見積もって毎年50万円貯めていくことができたとすれば、65歳時点の貯蓄額は2000万円になります。
退職金が出なくても困らないだけの貯蓄額といえるのではないでしょうか。そこから老後資金792万円を引いても1208万円残る計算です。
老後のお金に不安がある人は一度、年金額と預貯金の額を合わせて何年間生活できるか計算してみましょう。足りそうにない場合は長く働けばいいのです。あまり悲観的にならないようにしましょう。
竹内 義彦
一般社団法人終活協議会 代表理事
終活スペシャリスト
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