繁盛しているクリニックであっても、その内情にはトラブルを抱えているケースが少なくありません。しばしば見られるのが、人材の突然の退職やスタッフ間のトラブルといった労務問題です。診療にも深刻な影響を及ぼすリスクがあるため、院長の速やかな対処が重要です。※本記事は、『競合と差がつくクリニックの経営戦略』(日本医療企画、蓮池林太郎著)より一部を抜粋・再編集したものです。

頼りになる税理士や社会保険労務士を探す

税理士や社会保険労務士のなかには、親身になって相談に乗ってくれたり、知恵を授けてくれる頼りになる先生がいます。一方、どちらの味方かわからないような杓子定規の先生もいます。

 

開業医と同じで人柄が大事です。法律的な知識だけでなく、顧客である開業医のメンタルケアにまで気を配ってくれるような先生が理想的だといえます。ストレスで診療に差し障ってしまったら患者さんのためにもなりません。

 

頼りになる先生であれば、多少顧問料が高くなっても、1~2万円くらいは多く支払う価値があります。顧問料の相場は、クリニックの規模、訪問頻度、業務をどこまで行ってもらうかにより異なりますが、税理士の顧問契約(記帳代行含む)の場合は3~5万円前後で、別途、申告代行の費用が10~20万円前後かかります。社会保険労務士の顧問契約の場合は、数万円前後かかります。

 

個人で独立していて1人でやっている先生であれば、その先生からアドバイスを受け続けることができます。大規模な税理士事務所や社会保険労務士事務所であれば、顧問先から多くの事例が集まるため、問題を解決に導きやすいというメリットがあります。頻繁にあることではないかもしれませんが、もし気が合わない先生が担当になってしまったら、変更してもらうこともできるでしょう。

不満をもつスタッフが弁護士に駆け込めば、面倒事に…

労務トラブルに関して少し疑問に思ってネットで検索すると、多くの情報が出てきます。無料でメール相談を行っている弁護士事務所もあり、すぐに相談できます。

 

スタッフや元スタッフが弁護士に相談するとやっかいです。労働基準監督署の「あっせん」などで、金銭解決すれば50万円くらいで済む案件でも、「200万円くらい取れるかもしれません」とスタッフをそそのかして、案件を受注するケースもあります。筆者が相談を受けたクリニックでは、スタッフが弁護士を通じて200万円の請求をして、20万円しか取れなかった事例もありました。

 

仮に、スタッフが解決金として50万円を貰えたとしても、スタッフ側の弁護士費用が30万円かかり、スタッフの手元には20万円しか残りません。クリニックの支払額は解決金50万円とクリニック側の弁護士費用30万円の合計80万円です。結果的に、スタッフは弁護士を雇わないで最初から30万円貰っておいたほうが得です。

 

スタッフに弁護士を雇わせないための一番の予防策は、当たり前かもしれませんが、クリニックがきちんと法令遵守することです。また、スタッフから退職の意思表示があったときに面談をして、不満がないかどうかを確認しておくことが大切です。不満があるようなら、同僚のスタッフに依頼して、さりげなく法律事務所に相談する動きがないかどうかを確認してもらい、そのような動きがわかれば、退職する前に費用を支払っておくことも選択肢の1つです。

給与に「特別手当」を上乗せし、双方の緊張感を維持

いくら仕事ができて価値観が合うスタッフでも信頼しきっていると、やがては仕事をさぼったり、やる気をなくしたりします。常にお互いに緊張感がないといけません。

 

現在、当院では1年ごとに定期昇給がありますが、それ以外に筆者自身が働きを評価して、毎月の給与に特別手当を上乗せすることがあります。

 

金額が毎回上下するのはお互い心理的によくないので、だいたい同じ額を上乗せしていますが、スタッフが少なかったり患者さんの数が多く負担が大きい月には、臨時で少し多く上乗せしています。

 

万が一、働きが悪くなったときやトラブルが続出したときは、上乗せ分はなくすことになります。スタッフには常に評価されているという緊張感が生まれます。決して、高額な給与を口頭や書面で約束してはいけません。

 

 

蓮池 林太郎

新宿駅前クリニック 院長

 

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競合と差がつく クリニックの経営戦略 Googleを活用した集患メソッド

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蓮池 林太郎

日本医療企画

医師である著者は、2009年に東京新宿で開業しました。競合クリニックがひしめく新宿において、決して立地に恵まれていたわけではないのに順調に経営ができてきたのは、患者さんがスマホでクリニック選びをする時代になり、その…

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