●日経平均株価を構成する銘柄のうち、5月10日から13日までの期間において、210銘柄が下落。
●下落率上位10銘柄は決算も影響、値がさ株上位10銘柄の下げ幅は日経平均全体の半分強。
●上昇率上位も決算の影響大で、先週の騰落の大きさはインフレ耐性の有無が決定要因とならず。
日経平均株価を構成する銘柄のうち、5月10日から13日までの期間において、210銘柄が下落
世界の主要株価指数は先週、米国のインフレ加速に対する警戒が強まるなか、軒並み下落する展開となりました。日経平均株価も大きく下げ、5月10日から13日までの下げ幅は2,070円33銭に達しました。ただ、このような状況下でも、日経平均株価を構成する225銘柄のうち、逆行高を演じた銘柄もみられました。そこで以下、225銘柄について、同期間で下がった銘柄と上がった銘柄に分け、その差が生じた理由を考えます。
日経平均株価を構成する225銘柄のうち、前述の期間中に株価が下落したのは210銘柄と、全体の約93.3%に達しました。これに対し、上昇したのは14銘柄と、全体のわずか約6.2%にとどまりました(株価が変わらなかったのは1銘柄)。下落率の大きかった10銘柄と、上昇率の大きかった10銘柄は図表1の通りです。業種は東証33業種の分類に基づいています。
下落率上位10銘柄は決算も影響、値がさ株上位10銘柄の下げ幅は日経平均全体の半分強
図表1で下落率の大きかった10銘柄の業種をみると、電気機器(3銘柄)、鉄鋼(2銘柄)、情報・通信業(2銘柄)が目立ちます。ただ、個々の値動きをみると、決算発表後に株価が急落したものが多く、米インフレ懸念よりも決算要因が大きく影響したと推測されます。また、ソフトバンクグループは、世界の有力ベンチャー企業に投資していることもあり、世界的な株安が嫌気されたと考えられます。
なお、別途、値がさ株の動きにも注目してみます。5月10日から13日までの期間において、ファーストリテイリングを筆頭とする値がさ株の上位10銘柄は全て下落しました(図表2)。
この10銘柄の日経平均株価の下げ幅(2,070円33銭)に対する寄与額は1,107円29銭で、全体の5%にも満たないごく一部の値がさ株が、日経平均株価の下げ幅の50%強を占める計算になります。
上昇率上位も決算の影響大で、先週の騰落の大きさはインフレ耐性の有無が決定要因とならず
次に、上昇率の大きかった10銘柄をみると、食料品(4銘柄)、化学(2銘柄)、銀行業(2銘柄)が目立ちます。ただ、これらについても、個々の値動きをみると、決算発表後に株価が上昇したものが多く、やはり米インフレ懸念よりも決算要因が大きく影響したと思われます。例えば、味の素は、今年度の業績予想の内容と自社株買いの発表が、市場で評価されたとの声も聞かれます。
以上を踏まえると、5月10日から13日の期間、日経平均株価を構成する225銘柄のなかで値動きに差が生じた理由は、インフレ耐性の有無よりも、決算内容の強弱によるところが大きいと推測されます。また、構成銘柄の平均値によって算出される日経平均株価は、もともと値がさ株の動きに影響を受けやすい傾向がありますが、今回も、ごく一部の値がさ株の下げに大きく振れる結果となりました。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『先週の日経平均株価~下がった銘柄と上がった銘柄』を参照)。
(2021年5月18日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト