一般的には「創業者と当時の社員たちが情熱と努力で素晴らしい製品を生み出したからこそ成功した」というストーリーの方が、心にすんなり入ってきて感動を呼ぶでしょう。ですが、そもそも開発資金がなければその”素晴らしい製品”は世に出ることすらなかったわけですし、世に出たとしても運転資金が途絶えてしまえば、ストーリーもそこで途絶えてしまいます。
創業者が苦心の末に開発した”素晴らしい製品”は、ほどなくしてライバル社から生まれることになったか、あるいは買収され別企業のストーリーの1ページを構成することになったでしょう。
先のホンダの場合でいえば、4億5000万円を調達して外国製工作機械を入手した直後、日本は朝鮮戦争特需の反動減による不況に陥り、ホンダも経営が揺らぎます。そのことでライバルのトーハツ(東京発動機)に買収されそうになるのですが、このときも三菱銀行が運転資金を出して危機を助けたのです。
もし、三菱銀行が資金を出さず見放していれば累計1億台以上も生産された「スーパーカブ」は、トーハツのサクセスストーリーの一部になっていたかもしれないのです。
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