多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

日本も他人事ではない…「外国人労働者」問題

内戦中は、戦火を逃れる戦争難民が生まれましたが、その後の度重なる経済政策の失敗や、新たな独裁者の出現により、多くの経済難民が発生しました。

 

やはり1970〜1980年代に内戦や政情不安があったグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスの貧しい人々は、北を目指しアメリカ合衆国に不法入国を試みました。しかし、ニカラグア難民の多くは、南の豊かな隣国コスタリカを目指したのです。アメリカ合衆国に行くより距離が短くリスクも少なかったのが、一番の理由でしょう。

 

コスタリカに移ったニカラグア人の主要な働き先は、男性が工事現場、女性が家事使用人で、また男性と女性の双方が農業に従事しています。同じコーヒー生産国であるニカラグアからコスタリカに多くの農園労働者が移動したのも必然の結果でしょう。

 

2016年のニカラグア人労働者の平均賃金は、男性でコスタリカ人の66%、女性で55%と低いのが実情ですが、これはニカラグア人が就く仕事の多くに高い教育レベルが求められず、賃金が低いためです。

 

しかしこれでも、ニカラグアで働くより倍の稼ぎになります。コスタリカ人の中には、不法に労働するニカラグア人を非難する人々もいますが、実はコスタリカのブルーカラーの仕事の多くはニカラグア人が担っており、その労働力なくしては、コスタリカの経済はもはや立ちいかないのが実情なのです。

 

そのことがわかっているコーヒー農園は、ニカラグア人労働者を平等に扱い、彼らの生活が豊かになるように支えています。自国の労働力不足を他国からの労働力に頼ることは世界中の様々なセクターで見られます。

 

日本でも外国人技能実習生という名で来日した人たちが自由を奪われ、働かされている事例が数多く報告されています。それらの事例は、ゴール8のターゲット7の「現代の奴隷制」に関わる問題となっています。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

政府の制度を利用して来日した人々の多くが人権侵害を訴える現状は、早急に改善すべきでしょう。SDGsでは人種や性別、経済的地位などに関わらず、すべての人たちに対して平等な社会を保障することを目指しています。そのようなインクルーシブな社会をつくることが、持続可能な未来をつくっていくのです。

 

 

池本 幸生
東京大学東洋文化研究所教授

 

José.川島 良彰
株式会社ミカフェート 代表取締役社長

 

山下 加夏
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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