多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

不法滞在者100万人!コーヒー農場の外国人たち

さて、様々な人々の暮らしを支えるコーヒー産業ですが、一番労働力が必要となるのが収穫期です。そこで、収穫期における労働と平等について考えてみましょう。収穫期になると、チェリーを摘む作業に携わる労働力の需要が発生します。

 

同じ地域に位置する農園は、同時期に一斉に収穫が始まるので労働者の確保は容易ではなく、農園にとっての死活問題です。

 

地元の労働者だけでは足りないので、産業の乏しい貧しい県の住民や人里離れた山中に住む先住民に頼るのが一般的です。中にはコスタリカのように、他国の労働力が、収穫作業を担っている生産国もあります。

 

多くのニカラグア人が、コスタリカのコーヒー農園で働いていますし、コスタリカとパナマの国境地帯では、コーヒーの収穫期になると、パナマの先住民族の人たちがより良い収入と労働環境を求め、国境を越えて来ます。このような移動は政府の統計には現れにくいからこそ、コーヒーセクターとして隣国からの労働者を平等に扱う取り組みをすることが重要なのです。

 

コスタリカにおけるニカラグア人労働者の例で考えてみましょう。スペインの経済新聞(EXPANCIÓN)に掲載された2019年の統計を見ると、コスタリカには人口の8.23%に当たる約42万人の外国人が住んでいます。

 

その内訳を見ると、1位が70.98%のニカラグア人、2位が5.17%のコロンビア人、3位が3.38%のエルサルバドル人です。この数字を元に計算すると、約30万人のニカラグア人が住み、他の外国人を圧倒しています。

 

しかしこれはコスタリカ政府に登録し、税金を払っているニカラグア人の数です。コスタリカのコーヒー関係者によれば、収穫作業に当たる労働者の60%はニカラグア人で、コスタリカには100万人のニカラグア人が住み、そのほとんどが不法滞在者で税金も払っていないとのことです。

 

その中には、定住している人に加え季節労働者も多く含まれています。ニカラグアは、1936年から43年間、ソモサ一族の独裁政権下にありました。それに対しサンディニスタ民族解放戦線が武装蜂起して第一次ニカラグア内戦が起こり、1979年に革命は成功しました。

 

しかしアメリカの支援を受けた親ソモサ派との第二次内戦が勃発し、ニカラグアに平和が訪れたのは1987年です。しかし皮肉なことに、内戦終結によって大量の両軍兵士が失業者となってしまいました。

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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