2025年には、日本企業全体の1/3にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。会社を引き継ぐ人が見つからない場合、選択肢の一つとして考えられるのが「M&A(合併と買収)」です。今回は、M&Aのスキームでよく使われる「株式譲渡」と「事業譲渡」の違いを、売り手・買い手それぞれの立場から見ていきます。株式会社WealthLead(ウェルスリード)代表取締役シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が解説します。

目的による「株式譲渡」と「事業譲渡」の使い分け方

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

M&Aのスキーム(手法)には、「株式譲渡」「事業譲渡」「新株発行」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「合併」などがあります。なかでも、中小企業のM&Aは「株式譲渡」か「事業譲渡」が大半です

 

それぞれ一言でいうと、株式譲渡は「株式の売買」、事業譲渡は「事業の売買」です。M&Aで会社を売却しようとしているオーナー経営者の立場になって考えてみましょう。

 

【株式譲渡】自分が所有している自社株式を売却する→売却代金は自分個人に入る【事業譲渡】自分が経営している会社の事業を売却する→売却代金は会社に入る

 

このように、売却してお金を手にするのが、株主としての自分自身なのか、経営する会社なのかが決定的に違います。したがって、売却する目的によっても自ずとスキームは決まってきます。

 

売却する目的が、「個人として現金、創業者利潤を確保したい」にあるのなら株式譲渡を選択することになりますし、「ノンコア事業や不採算部門の売却」であれば事業譲渡が有力な選択肢となります。

 

また、株式譲渡と事業譲渡では課税関係も違ってきます。株式譲渡の場合は申告分離課税となり、譲渡益に対して20.315%の税金がかかります。どんなに利益が出ても税率は変わりませんので、個人としてお金を手にしたい場合は簡潔かつ有利であるといえます。

 

一方、事業譲渡の場合、譲渡代金は会社の所得になりますので、すべての所得と合算されて法人税の対象となります(いったん会社に入ったお金を配当として吸い上げて個人でお金を手にすることも可能ですが、税制も違ってきますので注意が必要です)。

次ページ売り手から見た場合の「株式譲渡」と「事業譲渡」

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