2025年には、日本企業全体の1/3にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。会社を継承する人が見つからない場合、選択肢の一つとして考えられるのが「M&A(合併と買収)」です。今回は、「M&A成立」までの3つの段階を、売り手・買い手それぞれの立場から見ていきます。株式会社WealthLead(ウェルスリード)代表取締役シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が解説します。

M&Aは「成立」まで3つのステップを踏む

M&A成立までのステップは?(※写真はイメージです/PIXTA)
M&A成立までのステップは?(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一般的なM&Aは次のようなステップを踏んで進んでいきます。

 

【図表】M&A成立までの3ステップ

 

M&Aは大まかに、「1.事前準備フェーズ」「2.実行・交渉フェーズ」「3.クロージングフェーズ」の3段階に分かれます。売り手企業オーナー、買い手企業経営者、それぞれの立場で順を追って見ていきましょう。

「準備段階フェーズ」は、FAを上手く活用しよう

<売り手企業オーナー>

まずは、売却する目的をはっきりさせることと、戦略を検討することからスタートします。売却する目的は何か、売却したあとはどのような人生にしたいのか等を、M&Aをスタートする前にしっかり考えておくことが大切です。

 

次に、いつごろ売りたいのか、売却の手法(スキーム)、売却にあたっての優先順位等を検討していきます。中小企業のM&Aは、多くは「株式譲渡」か「事業譲渡」によることになります。

 

また、売却条件の優先順位、特に、絶対に譲れない点を決めておくようにしましょう。たとえば、「全従業員の継続雇用」だったり、当面の「屋号の継続使用」だったり等です。いわば、譲れる部分と譲れない部分を明確化しておくのです。

 

次に、最も気になる「価格」はいくらくらいになりそうなのか、ざっくりとでも把握しておきましょう。価格の算定方法は、よく使われるのは年買法(年倍法)、類似会社比較法、DCF法等です。それぞれの詳しい計算方法を知る必要はありませんが、複数の方式で確認しておくことをおすすめします。

 

譲渡先の候補企業については、どんな企業が相応しいかよりも、むしろ、譲渡先として相応しくない企業を明確にしておくことがポイントです。取引先との関係、たとえば、譲渡後に現在の主要顧客との取引が難しくなるような企業は候補になりえません。

 

多くの場合、売り手企業オーナーにとって初めての売却になると思いますので、事前準備フェーズからFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を選任しておいたほうがよいでしょう。譲渡先候補企業の選定に関しては、FAとよくディスカッションをするようにしてください。

 

また、FAは依頼主である売り手企業の資料を作成します。「インフォメーション・メモランダム(IM)」とか「企業概要書」と呼ばれるもので、会社の歴史や商流、特徴や強み弱み、利益の源泉、人員構成や組織等が記されている、いわば売り手企業の「プレゼン資料」です。

 

このプレゼン資料の出来不出来が、案件の進捗に大きく影響します。FA任せにせずに、しっかり内容をチェックするようにしてください。

 

<買い手企業経営者>

まずは戦略・方針の決定です。自社の成長・発展のため、どんな事業(会社)が欲しいのか、商圏、ノウハウ、人材、許認可、ブランド、設備等、何を買いたいのか、予算はいくらなのか、等を決めておきます。

 

戦略が決まったら、取引銀行やFAに声を掛けておくと、ニーズに合いそうな案件を持ってきてもらえます。最近はネット上で案件を探せるM&Aプラットフォームがありますので、上手に活用することも一案です。プラットフォームによって利用料金は様々、案件のサイズやクオリティにも違いがありますので、自社にとって利用価値があるかどうかよく確認してみてください。

 

また、取引先や同業他社等でターゲット企業が決まっている場合は、事前に情報収集をした上で、接触する適切な方法とタイミングを検討しましょう。興味深い案件が見つかれば秘密保持契約を結んで詳細な資料を提示してもらい、検討に入ります。

 

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